「三文オペラ」(~踊る戯曲~)CHAiroiPLIN(@三鷹市芸術文化センター星のホール)
作:ベルトルト・ブレヒト、振付・構成・演出:スズキ拓朗。
5年前に同じ三鷹市芸術文化センター星のホールで上演されたものの再演。当時の記録は
https://haruharuy.exblog.jp/24618108/
感染防止策対応の中、検温、手指消毒してもちろんマスク着用。
やっと劇場も飲食が伴わないものは100%座席を埋めて良いとのことで、
先日の青年団に続き、満席の観客席。
とは言え、1列目の観客にはフェイスシールドを配布し、
椅子の感覚を空けての上演。
左右の扉は空け放たれ換気が行われ、今回の公演では間に換気のための3分間の休憩がある。
スズキ拓朗の創作する古典劇はわかりやすく面白い!
一見難解な物語や複雑な構造をシンプルにしてわかりやすく構成する。
しかも、セリフだけに頼らないで演出を行うのがスズキ拓朗らしいところ。
ダンスがあり、妙なオノマトペが発せられ、そして生演奏の音楽がある。
時々自動の音楽が祝祭性を加速させる。
シールドに遮られた透明のブースの中で演奏され歌われる。
清水ゆりの歌がいい!
「ゲルニカ」という80年代のバンドを思い出す(戸川純; 上野耕路; 太田螢一)
ほかにもCHAiroiPLINに出演する俳優(ダンサー・シンガー?)たちは
みんな踊って歌えてセリフも語る。
そのバランスが均等に近い「歌・ダンス・セリフ」のブレンドで私たちに提示される。
これを見て「ああ、演劇を見る事ってある種のお祭りに参加することなのだね!」
というとを、実感する。お祭りには必ず音楽や踊りなどがあり、
それをお祭りに行った人たちが見て自らを解放させていく。
劇場は、実はそうしたことを疑似体験できる空間なんだな!ということがわかる。
ある種の感染防止ルールに沿って、こうした祝祭性を体験できる場所が戻って来たことは
人々の心の健康にとってとても大切なことなのではないだろうか?
本作ではブレヒトの戯曲の根っこの考え方に対するスズキ拓朗の解釈がいい!
大変な時代でも人間がみんな持っている「人間らしい業」を受け容れて、
それでもみんなで生きて行きましょう!というメッセージが強く前面に押し出されている。
コロナ禍で全世界が同じ問題に直面している今の時代に
この舞台の発信するメッセージには普遍的な何かがある。
共存し共生するということを私たちは改めて考えていかなければならないのでは?
ポピュリズムと対極にある思想のさらにその奥には
ある種の素敵な世界が待っているのでは?
そこには確実に人が居て歌があり踊りがある。
上演時間3分間の休憩を入れて1時間50分。25日まで。