「The last night recipe」iaku(@座・高円寺)
作・演出:横山拓也。
明日、地球が滅亡するとしたら最期の晩餐は何が食べたいですか?
という話題で話をしたことがある人は多いのではないだろうか?
本作はコロナ禍の今の現実を丁寧に掬い取った舞台になった。
いままで見たコロナ禍をテーマにした演劇の中でも
私たちが感じていることを繊細に丁寧に掬い取ってくれている。
上演時間2時間20分(途中:換気のための10分休憩あり)。
濃厚ではあるが静かで柔らかな時間だった。
本作ではいま何が「幸せ」なのか?どんなふうに暮らしていくことが大切なのか?
ということが通奏低音のような感じで暗示される。
大声でそんなことを語る人たちは誰も登場しない。
ただ登場人物たちの会話を聴き、そこから観客が何かを感じ取るだけ。
小津安二郎・野田高悟脚本の「小津映画」を見ているような気持になる。
小津監督が今、生きていたらまさにこのような作品を紡いだのではないだろうか?
時間軸が2019年から2021年の間をいったり来たりする。
シーンと会話の内容を組み立てていくと、登場人物の関係や事情が見えてくる。
登場人物は個人経営の小さなラーメン屋の親父(緒方晋)とそこで働く息子(杉原公輔)。
フリーライターでこれから功成り名をあげたいと考えている30歳手前の女性(橋爪未萌里)。
そして彼女の父親(福本伸一)と母親(竹内都子)。
フリーライターの女性の先輩でもある女性のライター(伊藤えりこ)。
そしてフリーライター(橋爪)の彼氏でベンチャー企業の経営者(小松勇司)が登場する。
以下ネタバレあります。
物語はこんな感じで始まる。大阪のあるラーメン屋。
家族経営で父親がラーメンを作りそこで息子が働いている。
母親はずいぶん前に家を出てしまっている。1杯600円のラーメン。それだけ。
そこに関西ラーメン選手権とか何かの取材でフリーライターの女性(橋爪未萌里)がやってくる。
おやじさんへのインタビューのあと、おやじさんは飲みに行ってしまうのだが、
その後に、息子さんにも話を聴いていいですか?ということで
ラーメン屋の息子に取材をする。
ラーメン屋で雑用や皿洗いを主にやっている息子。
店がやっている時のまかないは毎日、ラーメン。
そしてお店が終わると父親は売り上げを持って近くのスナックに飲みに行く。
息子は片づけをして、それが終わるとTVを見て過ごす。その毎日の繰り返し。
女性ライターは息子が「こずかい」すらもらえていなく
毎日をそのような感じで過ごしている状況を「不幸だ」と感じ、
父親に搾取されているのではないか?と思い始める。
彼女は、この息子を中心としたルポルタージュを書くことによって
現代社会の格差や現実などをあぶりだし、それを出版することによって
フリーライターとして新たな道が開けるか!
さらに上にステップアップできるかもしれない?ということを思い付く。
彼女は息子にその後も取材を続けさせてもらうことを約束する。
もちろん、飲みに行った父親には内緒で。
そこからコロナ禍が始まり、彼女は大きな決断をする。
その後、2021年3月3日彼女は突然心臓停止で亡くなる。
たまたまこの日、彼女は新たなワクチンを接種した日だったという設定。
彼女は1年前からブログを始めておりその題名が「ラスト・ナイト・レシピ」というもの。
ただ毎日食べたものを写真と文章とともにそこにアップしているというだけ。
そして、彼女が亡くなった後、彼女の両親が…。さらにはラーメン屋のおやじが…。
という形でいろんな話がつながっていくのだが。
その流れから見えてくる
「かけがえのないもの」
に横山さんは光をあてる。
大きな声で語らないのでわかりにくいかも知れないが、
その通奏低音が琴線に触れると
たまらない演劇体験となるのではないかと思います。
カーテンコールで一人立ち上がって延々と拍手をする白髪の女性が居た。
実は多くの人たちが彼女と同様の感情を持ったのではないか?
しかしながら劇場は感染対策もあり換気や蜜を避けるために
しずしずと終演となるのであった。
11月1日まで。その後、伊丹市立演劇ホール。


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