「プライベート・ジョーク」パラドックス定数 第46項(@東京芸術劇場シアターイースト)
作・演出:野木萌葱、出演:植村宏司、西原誠吾、井内勇希、加藤敦、小野ゆたか。
パラドックス定数のいいところは作・演出の野木さんの筆力はもとより、
この数年円熟味を増した演出、そして、その演出を自らの身体を
使って表現する俳優たち。このアンサンブルが
とてもうまくいっていることが劇団としての大きな魅力になっている。
2年前だったかシアター風姿花伝で野木さんの過去の作品を
ここにも登場している俳優たちが演じて何本にもわたる作品を連続上演した。
奇跡のような熱量の高い公演だった。
そして野木さんは外部への書き下ろしなども増え、
外部の劇場から招聘される公演も増えていった。
しかし、今年のコロナ禍でその流れが少し止まってしまった。
昨日、弊社で始まった音声コンテンツの収録で
日本舞踊の師範と鎌倉彫の職人さんが対談されたのだが、
コロナ禍の最大の問題は芸術家が芸術を発表するチカラが
コロナ禍で人と交わらないことや発表の場がないことで衰退していくのではないか?
という危機感を感じているといいうお話をうかがった。
芸術を普通に作り続けていける環境を保ち続けることが
芸術家にとっていかに大切なことであるのか?を教えていただいた。
このコロナ禍でも創作を止めないでやりつづけるためにはどうすればいいのか?
完全な答えなどはない。試行錯誤しながらリスクヘッジし、
やりつづける意思を持ち続けることがいま私たちに問われている。
この状況がこの舞台で描かれている芸術家たちの状況と重なって見えてくる。
野木さんは本作を2007年に執筆したとある。当時の公演は見ていない。
1930年代ごろのバルセロナの学生寮という設定なのだろうか?
1929年のブラックマンデーを契機に世界
恐慌が起き、米国は禁酒法が施行され、各国から多くの芸術家がパリに流れ、
ローリング・トゥエンティーズという言葉が生まれた。
新たな芸術の表現形式がそこで生まれヨーロッパ中に拡がっていった。
そして、1930年代にはドイツではナチスが政権を取り
第二次大戦へと突入していこうとする時代。
本作の参考文献として「ブニュエル・ロルカ・ダリ~果てしなき謎~」
「アインシュタインの世界」「バルセロナ特別美術展1990~バルセロナ・アバンギャルド」
があげられていた。まさにこのタイトルにあるような登場人物たちが
バルセロナの学生寮に集まって語る数年間を描いているのだろう。
歴史に翻弄されながらも新たな芸術を模索する若き熱のある芸術家たち、
その彼らがここで熱く語り合い議論する、時には口論や殴り合いになることも。
しかし一様に彼らはまっすぐである。
その青さを劇団旗揚げ前にこれを執筆した野木さん自身も持っていたから、
こうした戯曲が生まれてきたのではないだろうか?
野木さんは「ごあいさつ」の折り込みに、当時の脚本を読み返してみて
「これは、ひどい。巧い拙い以前の問題だ。何をしているんだ、十三年前のノギモエギ。ああ畜生」
というような自虐的な文章を書かれていた。
しかし、その時にもっていたまっすぐな「演劇をやりたい!」という気持ちが
こうして新たなカタチで円熟した演出と訓練された俳優たちに演じられることによって
また違った形の価値が生まれて来たのではないでしょうか?
一席ずつ間隔を空けての公演。アルコール消毒と検温をして入場する。
上演時間約2時間。12月13日まで。



