「帰還不能点」劇団チョコレートケーキ(@東京芸術劇場シアターイースト)
日本は、日中戦争そしてその後の太平洋戦争、いわゆる
第二次世界大戦の戦争責任をきちんと取らなかった。
いや、取らなかったという言い方は誤解を招くかもしれない。
見方を変えると取らなくて済んだ!ということなのか?
敗戦後、米軍GHQが日本を接収して米国主導で新たな憲法「日本国憲法」が設立された。
そして日本がまた同じようなことを起こさないようにと航空機産業などが規制され
再軍備や富強政策などのかかわるものは注意深く排除されていった。
私たちはそれを受け身で容認し続け日々を過ごし、そしていつの間にか
他国で起きた戦争で生まれた特需を補うために懸命に働き生産し高度成長が起き
ついには1980年代後半にバブル経済を迎え「ジャパンアズナンバー1」などと言う言葉が生まれた。
一方ドイツはヒットラーというカリスマのファシストの極端な政策を戦後
徹底的に見つめなおし、ホロコーストに代表されるジェノサイドを
二度と起こしてはいけないという想いから、自らの戦争責任をその根本まで追求したと聞く。
本作を見て思ったのは作者の古川健が
日本のあの時期の戦争について徹底的に調べた結果から生まれた想いが根源にあったということ。
それは、どういうことかというと、
あの戦争は開戦を阻止できたのではないか?ということなのである。
どこで国家の判断がゆがめられていったのか?
米国と一戦交えることになれば絶対に負けるとすべての関係者が理解していたのに
なぜ私たちはそこに突っ込んでいったのか?
資源のない国だからこそどうやって生きていくのが
一番いいことなのか?を考える知性があったはずなのに
なぜそんなことになっていったのか?
ということがこの舞台を通じて具体的に伝わってくる。
題名の「帰還不能点」(the point of no return)とは戦闘機が自らの燃料を積んで攻撃に出る。
そうするとこの地点で空母や基地に戻らないと燃料がなくなり戻れなくなる
地点がおのずと見えてくる。そうなるともう後戻りはきかなくなる。
そこを超えると突っ込んでいかざるを得なくなる。
本作は日本が第二次世界大戦で行った戦略で
どのタイミングが帰還不能点だったのか?ということが描かれる。
それはいったいどこなのかは見てのお楽しみです。
(以下、ネタバレ少しあります。でもこれを読んで見ても十分面白いかと。)
舞台は戦後5年目の1950年の東京の大衆居酒屋。
この店を営んでいる女将さんの夫が元日銀に勤めていたのだが先日病気で逝去した。
この日は、戦前彼と一緒に「模擬内閣」を組閣し
政治判断のシュミレーションをしていたというチームの仲間たちが集まり
「献杯」をするために同窓会が開催された。
日本中の知性がそのチームに集められて徹底的に議論したのだが、
結果、日本は戦争に突き進むこととなった。
外務省の役人、内務省の役人、海軍や陸軍の軍人、大蔵省の役人、
そして日銀の役人や政治家の秘書などがそのチーム員だった。
彼らがこの居酒屋で故人を偲びながら
いったい当時どのような検証を行ったか?ということが劇中劇のカタチをとって再現される。
この戯曲のために集められたのでは?という絶妙なキャスティング。
そして強度のある日澤雄介の演出が冴えわたる。
観客の想像力を信じ切った作者と演出家そして俳優たちの創作の姿に敬意を覚える。
そして私たちはその姿にちゃんと向き合わなければならないと襟を正すような気持で拝見した。
その結果は、この日のカーテンコールで良く伝わってきた。
どうしたら私たちは、戦争を始めないようにできたのか?
そのことを私たちは
彼らとともに生涯考え続けていかなければいけないのかもしれない。
そうすることが私たちが出来る「戦争責任」を取ることの
ひとつのやり方であるのかもしれない。
上演時間2時間。2月28日まで。



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