「ミュージカル ロミオ&ジュリエット」(@赤坂ACTシアター)
主演ロミオ役:黒羽麻璃央、初日観劇。
緊急事態宣言の中、本公演は開幕できるのか?という中
キャストやスタッフの努力の甲斐あってついに開幕!
本プロダクションは、2001年にフランスで制作されたミュージカル。
原作はシェイクスピアだが、翻案したのはジェラール・プレスギュルヴィック。
その後、世界中にこの作品が拡がっていったらしい。
日本では2010年に宝塚歌劇で初演され
2011年に日本オリジナル版として上演された。
日本版の潤色・演出は小池修一郎(宝塚歌劇団所属)。
誰もが知っているあの名作がこうなるのか?と見た方は
ある種の驚きを持って受け止めるに違いない。
中世のあの時代から別の世界にタイムスリップした異次元の国のお話なのか?
物語の大きな流れはシェイクスピアの原作にほぼ忠実、
しかし、そこに携帯電話があったり、メールを送ったりという
現在の要素が加味されて若い人にも親しみやすい要素を織り込んでいる。
さらに感心したのは、「ミュージカル」と銘打っている以上に「ミュージカル」だった!ということ。
通常のミュージカルはセリフの間に時々音楽が挿入されるという印象だが、
この作品は、音楽が主体。
音楽とそこで歌われる歌詞がセリフとなり、音楽の間に
それを補完するくらいの間でセリフが挿入されている。
なので、観客は演者たちの歌を聴きながらストーリーを自然と追っていける。
ここまで「音楽」が多用されたミュージカルをはじめて見た。
音楽のクオリティ自身も高く、基本、黒羽さんを初めとする出演者が上手い。
きちんとハモリ、その調和した音を聴いているだけで気持ちがいい。
演奏とマイクを通したボーカルのバランスがいい。
そしてプロジェクションマッピングの映像や照明、舞台美術、照明、
そして現代的な衣装などなどが高いレベルで調和している。
二階席で見せていただいたが遠くからでもまったく問題なく楽しめる。
本作品の構成が前半80分、休憩25分入れて、後半80分となっている。
対立している家同士である
キュピレット家のジュリエット(この日は伊藤六花)と
モンテギュー家のロミオ(黒羽麻璃央)が神父さんの下、教会で結婚するまでが前半。
それ以降が後半となっており、それをまったく同じ時間で構成してある。
この時間構成の緻密さは狙いなのか?
この舞台に通底しているのは、争いや憎しみの中からは決して幸福は生まれてこないということ。
ロミオとジュリエットという若者の純粋な愛に周囲の者たちが死を契機に
向き合ってようやく和解し平和に向かっていく。
この二人の「死」の犠牲は意味があったのだろうか?
「死」をもって人は平等となりようやく二人は結ばれたのか?
日本の近松門左衛門の「心中もの」にもあるような「死生観」の要素が
英国のシェイクスピア劇にもあるのは、人間としての必然なのだろうか?
それとも、この二人の作者が1600年代に生きていたという意味で通じるものがあったのだろうか?
本舞台ではそれを強調するような「死」という役名のものが登場する。
これを見ていると私たちは常に「死」と隣り合わせで生きていると強く意識させられる。
それゆえに私たちは、今ここにある瞬間の「生」を大切にと教えてくれる。
この日、イスラエルとパレスチナの「ハマス」との停戦が決まった。
カーテンコールが延々と続き3回目のカーテンコールは全観客のスタンディングオベーションだった。
6月13日まで。6月5日と6日にはライブ配信も行われるらしい。
その後、大阪と名古屋の公演がある。