「ルシオラ、来る塩田」桃尻犬 MITAKA”Next”Selection22nd(@三鷹市芸術文化センター星のホール)
作・演出:野田慈伸。「桃尻犬」初観劇!折り込みのチラシにこんなことが書かれてあった。
「柄にもなく元気を出してもらえる作品をと思いながらつくりました。(中略)
いろんな「希望」を込めた作品です」と。
実は公演チラシには「コンビニに煙草を買いに行ったまま
帰ってこない母親に置いて行かれた兄妹」と書いてあったので、
どんな話なんだろう?と思い、最初は、是枝監督の映画「誰も知らない」や「万引き家族」
のようなものなのか?と予想していたのだが、
劇場での折り込みの文章を読むと、果たして母親に捨てられた兄と妹に
「希望」は来るのか?などと思いながら開幕を待った。
物語は公演チラシに書かれていたようにまさに、
母に捨てられ、親がいなくなってしまった兄と3歳下の妹の話だった。
しかし、登場人物が明るくそしてポジティブ。
漫才で言う所の「ぺこぱ」みたいにすべてをいいように解釈し生きていこうとする。
それを見ていると劇場内からは自然と笑いが起き、時々爆笑の渦が起きる。
悲惨なことなのかも知れないのに、それを悲惨でないように描く。
出演している俳優たちがほぼ初見の人ばかりだが個性的で面白い。
特に、貝原役の堀靖明はデパートの催事場担当者なのだが、
その風体と喋り方がむちゃむちゃ面白い!
まるで第7世代の漫才師を見ているような感じ。
物語は九州?か中国地方?だろうか?場所は定かではないが
田舎の地方都市?これを見ていて倉本聰の「北の国から」を思い出す。
兄と妹が「純と蛍」のように見えてくる。
そこに集まる、兄と妹を養う遠縁の親戚のおじさん。
おじさんは乳牛を育てている畜産農家。
そしてこの町に1軒だけだろうか?何故かアメリカンダイナーがあり、
そこで働くシェフとウェイトレス。
地元にこれも1軒だけではないか?デパートの催事場の担当者とその部下。
そして催事場に出す、芸術的な焼き物を作っている夏見先生(徳橋みのり)。
妹の高校の同級生と離れて暮らす兄(作・演出の野田慈伸)。
地元の動物園の飼育員(かませけんた)→かなり個性的です。
そして、兄と妹を捨てた母親が登場する。
この12名の俳優たちが三鷹の大きな劇場を縦横無尽に使って表現する。
彼らのどうしようもない物語を見ていると何故だか笑えてしまう。
閉塞した村の状況が今の「コロナ禍」と通じていくように思えた。
閉塞し悲惨だからこそ笑い飛ばそう!
ゴーリキーの「どん底」のような、あるいは、ブレヒト劇のような
展開がやがて、スティーブン・キングの世界となっていく。
それは、見てのお楽しみです。
なるほど、こう来たか?と野田さんのたくらみに感心した。
上演時間95分。
まったく退屈しない濃密な世界が体験出来るのでは?9月12日まで。



