「物理学者たち」ワタナベエンターテインメントDivers Theater(@本多劇場)
作:フリードリヒ・デュレンマット、翻訳:山本佳樹、上演台本・演出:ノゾエ征爾、
プロデューサー:渡辺ミキ、綿貫凜。
スイスの劇作家の作品を見るのは多分人生初ではないか?
デュレンマットはスイスの中でもドイツ語圏で育ったのだろうか?
本作をドイツ語でお書きになっており、
ドイツでこの作品は何度も上演されているらしい。
本作が書かれたのが1960年代の初頭。
先日見た舞台の「ズベズダ」にも出て来たがまさにキューバ危機で核戦争勃発か?
という緊張関係が最高度に上がった時期。
東西の冷戦が加速し、物理学者たちの理論をもとに開発された
「核弾頭」が大量破壊兵器として実際に使われるのでは?という状況だった。
アインシュタインの発見したE=mc²という公式が導き出したものが
人類を滅亡させるかもしれない兵器に変わっていく。
デュレンマットの戯曲が深い。
科学者が自由に研究することで生まれてしまうこのような問題をどう考えるのか?
そして科学者たちは自由に研究することを止められるのか?
決して、それは止めることが出来ないことが本作を見ると良くわかる。
科学者とはそういうものだ。芸術家が自らの創作活動を止められないのと同様に。
それ自体が生きることにつながっているのだから。
前半60分、休憩10分、後半60分という構成。
この構成もデュレンマットのたくらみなのか?とても美しい構造となっている。
演出のノゾエ征爾らしさが前半は全開!
とぼけたユーモアが次々と行われ。
「物理学者たち」というタイトルから来るやや硬質な印象とは
まったく違う様子が展開される。
芸達者な俳優さんばかりを集めているので舞台自体の基本ベースが出来ている。
さらには、初めて拝見した俳優の刑事役の坪倉由幸(我が家)
そして看護婦役の瀬戸さおりが印象に残った。
舞台は「サナトリウム」。
隔離された場所で暮らす人々。
入所者の温水洋一はニュートンと呼ばれ、中山祐一朗はアインシュタインと呼ばれている。
そしてメービウスと呼ばれている自分のことをソロモン王だと言い張る入江雅人。
この場所で看護婦が殺されると言う連続殺人事件が起きる。
3人の看護士をそれぞれ殺害した三人の物理学者たち。
なぜ彼らは犯行を行ったのか?が後半になって明かされていく。
前半で独特な劇世界とこのサナトリウムの状況を理解し、
後半にかけていろんなことが見えて来て舞台は加速度的に緊迫度を深め
面白くなっていく。
そこにはデュレンマットが戯曲で設定した「ソロモン王・ニュートン・アインシュタイン」という
関係性が深くかかわっていることがわかる。
そこには欧州の人ならみんな知っているだろう
神学やキリスト教、ユダヤ教、そしてユダヤ人のこと
ナチズムの台頭とヒットラーと言うカリスマの登場、
その後の大量虐殺、第二次大戦を契機に始まった
核開発競争などの歴史が詰め込まれている。
科学者は神になりうるのか?神学と科学は対立するのか?
並存するのか?科学者が考え続けることを誰も止められない理由はどこにあるのか?
そんなことを大量に想起させ私の中の知的好奇心を刺激してくれる。
そんな刺激的な2時間の舞台だった。
こんな戯曲が日本で上演されることに感謝。
劇場ロビーに置かれている無料のリーフレットを読んでから見るといいと思います。
9月26日まで。





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