没後50年ということで、フィルムセンターが
溝口健二再発見と題しての特集上映が始まった。
待ってました!という感じである。
この秋に、恵比寿で上映をしていた時は、
仕事がてんてこまいで全く行くことが出来ず、
NHKのBS2で何本かの溝口健二作品の放送をしていたが、
HDDに録画したのちDVDにダビングするだけに留まっている。
溝口健二の映画を僕はほとんど見ていなく、
今回の特集上映はほんとうに楽しみにしていた。
唯一「雨月物語」だけ。
その幽玄の世界とモノクロの画面の美しさに驚いた記憶がある。
本作は、モーパッサンの「脂肪の塊」を原作にしている。
以前、同僚だったディレクターのAさんがオススメ本として教えてくれたことを思い出した。
すぐに、文庫本を買いに行った覚えがある。
Aさんは、その後、講談社ビッグコミック新人賞を受賞し、
現在漫画家「阿部夜郎」として仕事を続けている。
川口松太郎の原作はこの「脂肪の塊」を西南戦争の時代に置き換えたもの。
戦乱の薩摩の村を出て行こうとする人々が乗り合い馬車に乗り、それから・・・。
というもの。山田五十鈴が「マリヤ」の役を演じている。
彼女は田舎芸者。同じ乗り合い馬車に、商家の金持ちの家族も乗っている。
山田五十鈴は献身的に、自分の食事を彼らに与えたり、
官軍の将校が商家の娘を連れて来いというところを、
私ではいけませんかといって、自ら身を挺する。
そんな恩義を受けながら、商家の人たちは、
山田五十鈴たちのことを平気で裏切る。
この鮮やかな対比に、見ている方はぐぐぐっと引き込まれる。
この「マリヤ」というのは明らかに、アベマリアのことなんだろう、
エンディングにクラシック音楽が流れるのだが、
あれは確かに「アベマリア」の曲だった。