『誠實浴池 せいじつよくじょう』王 嘉明/Shakespeare's WildSisters Group✕ タニノクロウ/庭劇団ペニノ(@城崎アートセンター)
大きな銭湯だった場所が劇場にしつらえられている!男女の壁が取っ払われたような空間が広がる。どこか懐かしい情緒のある場所!
日本と台湾の共同製作なのか?台湾の映画を見ていると昭和の日本映画の情緒みたいなものを感じる。
ホウシャオシェンやエドワードヤンなど、才能のある監督の映画がたくさんある。そこで描かれるのが自然も含めての情感!
これを受け容れる感覚が日本と台湾はとても似ていると思うのだがどうだろう?
本作は川端康成の「眠れる美女」を手掛かりに王さんと構想を膨らましたとタニノさんが書いている。
「海で戦死した兵士たち専用のSMクラブ」と書かれていた!ここは銭湯を改造した場所で風俗営業が行われている。
サービスをする女性が夕方になってやって来て化粧をし、開店の支度を行う!ここの女主人が片桐はいり。
片桐さんがこの場所の掃除をしているところから舞台は始まる。やわらかな光がこの場所を独特な情緒と湿度で包みこむ。
そこにお客としての戦死した兵士たちがやってくる。台湾と日本の俳優たちが入り乱れる。
台湾語と日本語で会話が行われ字幕が英語と日本語で表記される。
ここでは客はお店の人に要求をしてはいけない!客は女性たちの言うことに従い、与えられた役割を演じる。
まさにプレイするということなのだろうか?
面白いのは、そのプレイで彼らがいろんな立場を演じることによって身体も含めて、その立場のことを理解していくこと。
性別や人種、民族、哺乳類などの垣根を超えていくことで大きな包摂の気持ちが見えてくる。
台湾のデジタル担当大臣のオードリータンが提唱するデジタル民主主義の思想みたいなものがこの舞台にはあるのでは?
犬になったプレイを元兵士たちが行うシーンがあるのだが、一生懸命、彼らが洗面器に入ったご飯を食べているシーンを見ていると何故だか泣けて来た。
こうしたことで兵士たちは本質的な心の安寧を取り戻してこれからも生きていきたいというような活力を得るのだろう!
実際は彼らは死者がよみがえった設定なのかもしれないが、このファンタジーを通して観客は同じような気持ちを得ることが出来る。
芸術の持つチカラ。演劇体験という身体や空気を含めてその場に居合わせる事で得られる効用が確かにある!
本公演は、この後、10月3-5日に東京芸術劇場プレイハウスで上演される。


