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「野々村良枝の失踪」タテヨコ企画(@シアター風姿花伝)作・演出:青木柳葉魚 東京に行く用事があり、何か面白い演劇がないかな?と探していたらタテヨコ企画の公演があることを見つけた。劇団名は聴いたことがあったが行ったことがなく、当日清算で手数料なしで予約できたので行ってみた。こうした舞台を見ると舞台は決して大きな小屋で有名な俳優さんが出ていて、チケット代も高いものだけじゃない!ということを実感する。本作は母親の認知症と母親の周辺の家族を描く物語。老いをテーマに家族を描くという意味では劇団「普通」の石黒麻衣の作風にも似たテーマではある。本作はよりリアルに認知症になった家族と介護、そしてその周辺の人々が描かれている。演劇で見ているだけで大変そうだなというのが身体を通じて伝わってくる。私の妻が現在、妻の実家の介護に毎日のように通っている。私はそれを手伝う事などは出来ないのでただただバックオフィス支援として私の家の家事を引き受けているのだが、こうした介護の大変さのリアリティを見せられると、私の想像力の貧困さを感じるのだった。毎日、毎日、要介護の親に向き合うこと。多くの人たちはその現実に向き合わず見て見ぬふりをしてやりすごそうとしているのではないか?しかし、現実問題として排泄の課題や食事、運動の課題などは目の前にある。本作は野々村良枝(あさ朝子)74歳が突然家を出ていなくなってしまい、その1週間後という設定。舞台は次男46歳(西山竜一)の一戸建て。次男の妻40歳(いまい彩乃)が実質的に義理の母親の面倒を見ている。これを観て、これは「東京物語」やないか?みたいなことを考えた。次男はラーメン店を数店経営していて順調なのだが若い愛人を作っていて、たまにしか家に帰ってこない。この家には野々村良枝の夫75歳(宮島健)と、パチンコ屋に毎日行っているだけで仕事をしていない長男50歳(園田シンジ)そして、長女48歳(舘智子)の娘17歳(宮崎明音)も一緒に暮らしている。長女は娘が10歳の時に海外赴任の話があり、母親である野々村良枝に娘を預けて7年間ほとんど娘にも会わず仕事一筋の生き方を選択していた。という複雑な関係が描かれる。要介護の野々村良枝の支援をしているケアマネジャー35歳(福永さとみ)が外部の視点で語るのがとても興味深かった。そしてケアマネジャーの方は要介護の認知症の方々の人権をきちんと重んじレスペクトしているという姿勢がすごい。人間の持つ尊厳を蹂躙しないことをベースに仕事をされている姿が言葉の端々から見えて来て、演劇とは言え見ていてその姿は格好良く思わずレスペクトしてしまった。言霊という言葉があるように、まさにどういう言葉で認知症や要介護の人に向き合うのか?ということが出来ていないと務まらない仕事なんだなということがわかる。家族だけで介護などをしていると1対1の関係となってしまい、客観的に見えなくなってしまうような状況があるということがケアマネジャーのような外部の専門家が入ることによって緩和され客観視されることの重要性を感じた。そういう意味では日本の介護制度は良く出来ているのではないか?介護人財の不足が日々言われ、ケアマネジャーが本来の仕事以外の実介護業務をせざるを得ない現実があることを新聞記事などで何度か見たのだが、そうした歪や矛盾を修正するために何をするべきなのか?を真剣に考えないといけない時代。所得の格差などの課題が根強く残っている業界を現実的な解決策を提示できるのは行政や政治の課題なのではないか?所得の再分配も含めて、特に年収の高い方々には、その資産を社会に還元させることはとても意義深いことなのではないか?みたいなことを考える。こうした家族と介護、認知症の課題と同時に描かれるのが世間や近所の声。それを体現するのがご近所さん50歳(久行志乃ぶ)。この方の存在から世間を描く。SNSでの匿名発信なども含めて、なぜ、こうしたことが世間で行われるのか?そうして時間が経つと忘れられ情報は消費されてしまうのか?ということを考えさせられる。 猫は自分の死期を感知すると自らその場所を出て姿を消してしまう。というのを何かで聴いたことがある。本作を見てそのことを思い出していた。母親が持っていったリュックの中からスーパーのチラシの切り抜きやティッシュがたくさん出て来た。それをゴミじゃないか?と長男や長女は言うのだが、17歳の孫娘はそれをおばあちゃんの宝物だと言い切るシーンには泣けて来た。おばあちゃんはスーパーの特売の品のところを切り抜き保存して安く家族のために食材を買ってあげたかったのではないか?そのことを知っている孫娘はそれはゴミではなく宝物と断定出来たのだろう!その孫娘の愛情深い言葉をちゃんと家族で交わせているのだろうか?と自省をしながら本公演を見続けた。 長男、長女、次男が子どもの頃家族で行った高台の公園にやってくる野々村家の一家とケアマネジャーさん!夕陽が沈むのを見るシーンがウッディアレンの映画「インテリア」で窓の外を見る三人姉妹のシーンや、「八月の鯨」で海を見る老人たちのシーンを思い出した。滋味あふるる、小劇場らしい演劇の秀作だった。3月22日まで。上演時間1時間55分。公演詳細は以下 http://www.tateyoko.com/next/nonomura/index.html ![]()
by haruharuyama
| 2026-03-20 09:03
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