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「ミッキーアイランド」滋企画(@アトリエ春風舎)作・演出・音楽:糸井幸之介、出演:永井茉梨奈、井上みなみ(青年団)、岡本陽介、木村友哉(ザジ・ズー)、佐藤滋(青年団/滋企画)
3月に東京で会いませんか?と誘われて何日か候補日をいただいた。その中からこの公演の上演チケットが予約できた日の前日の日を希望させていただいた。2-3か月に1回くらいこうして東京に1泊か2泊で観劇に来るのが私の中の大きな楽しみになっている。大きなことなどは求めない。ただただ、観劇をしてそこから心が震えるような体験をしたいというだけ。贅沢なことなのかも知れないが、それ以外はつましい生活をして暮らしている。自宅にいるときはほぼ自炊をしている。最近はサンバルスープなどを作ったりして、探すとそれに使うスパイスやタマリンドを売っている店も見つかるようになった、どうしても欲しいときは楽天市場などの通販でも購入することが出来る。そうして、小竹向原駅に東京メトロの24時間券(700円で24時間東京メトロ乗り放題)を握りしめて向かった。この日は春分の日で祝日ということをすっかり忘れていた。駅前の劇場近くにあるファミレスのガストで1時間時間をつぶそうと行ったら、何と満席で空席待ち!席に案内されて平日のランチメニューがないことに気づいてようやく今日は祝日だったのか?ということを知った。明太子パスタとドリンクバーを注文。開場が30分前なので食べ終わって劇場に向かう。あいにくの雨模様!冷たい雨がしとしと降っているアトリエ春風舎の前には数十名の列が出来ていた。支援会員、事前精算、当日清算、当日券の順に入場。春風舎にこんなにたくさんの観客が入るのを見たのは初めてだった。奥の方が空いていたので一番奥に座ると椅子からスマホが伸びている席があった。最初は、これで舞台撮影をされるのだろうか?と思ったのだが、それは大きな勘違いだった。ろう者の方に字幕機を貸し出すサービスをされていることがわかった。拍手の際に手を挙げてパラパラみたいなチアリーダーみたいなポーズをすることを最近知った。たぶん昨年の東京で行われたデフリンピックの報道を見たからだと思う。特に皇室の方々のニュースなどでそれをされているのを良く見かけた。このことを「サインエール」ということをこのことを調べていて初めて知った。https://www.tokyoforward2025.metro.tokyo.lg.jp/news241217/ この日はプレトークがあり作・演出・音楽の糸井さんとろう詩人のSasa-Marieさんが事前にトークをされていた。手話通訳の方が2名いらしていて交互に手話通訳をされていて、まさにその現場で拍手が起きた時に手話通訳の方がチアリーダーのようなポーズをされたのだった。中でも糸井さんが舞台の平台に上がってそこでの足音がどれくらい聞こえるのか?ということを説明されていることが興味深かった。それを聴くと一番上の平台から飛び降りると大きな音がするのだ!ということが事前にわかりそのシーンを見るとさらなる情報が加味されてイメージが拡がるのかもしれないな?と思った。そして糸井さんと言えば、音楽が欠かせないのだが、音楽空気の振動でもあるので身体全体としてどのように受け止めるのか?というようなことを考えた。そのことは空気を共有することでたとえその音が聴こえなくても感じられることは確実にあるはずだ!と思う。それが私たちに与えられた能力でもあるから。言葉だけが前面に立ちすぎた現在社会は身体全体で感じるみたいな体験をおろそかにしてないだろうか?ということを考える。ICT社会、生成AIの社会になってよりそうした身体を含めた体験が求められてきているのではないか? 本公演はそうしたことを身体全体で体験できる舞台である。噂が噂を呼び、毎回満席の人気公演になったと聞く。70人入るだろうか?という小さな劇場に独特の熱量が生まれた。愛すべきすべての人たちに捧げる、ある、年老いてしまった男とそれをめぐる人たちの物語。還暦から古希を迎えつつある男を演じるのが滋企画の劇団名にもある佐藤滋。本作では役名が滋企画(キカくん)というのも笑った。パッとしないミュージシャンだったキカ君、お母さん(永井茉梨奈)との思い出が描かれる。すべてを受け容れる母との交流が切ないのだ!その切なさは舞台を観ればわかる。そして、元ワイフを演じたのが井上みなみ。独特の明るさと俊敏な動き、クールな中から見えてくる愛情(恋愛ではないのだが)のさりげなさがいい!この大きさの舞台ならこれで十分伝わるだろう!ということが分かっている。そして観客の想像力におもねり観客を信じてくれているからこその芝居がそこにある。そしてキカ君を取り巻くクウキ(木村友哉)と鼠(岡本陽介)キカ君の明暗を表すような二人の対比が面白い。そして、私(64歳)と同じくらいの歳となったキカ君は、ライブ中に転倒し腰を痛めてしまい寝たきりになる、歩くことが出来ず日々一人暮らしのアパートで寝ている暮らし。出来合いのお弁当を食べ、ベッドに居続ける生活。死期を悟ったかのような暮らしを淡々と受け容れていくキカ君。この舞台に通底するのは圧倒的な「抒情感」とでもいえばいいのだろうか?西原理恵子のマンガにも似た、ある男の人生を通じてその関係者の様々な過去の人生が見えてくる。まるで映画を見ているようにシーンがカットバックされ回顧シーンがそこに挿入される。子どもの時のお母さんとキカ君。元ワイフがワイフになる時のエピソード。どうして付き合うようになったのか?そしてどのように結婚に至ったのか?現在の社会からは大きく逸脱しているのかも知れないキカ君をそうした周囲の方々があたたかく見守る。圧倒的なのはそれらをすべて受け容れながら俺はオレとして生きて行くぜと生き方を曲げなかった男。腰がやられてしまっても、仕方がないと受け容れて自分を生きて行く。その純粋な姿に家族や元家族たちは心を許してしまうのかも知れない。その生きづらく心身ともに大変な人生と純粋な生き方との対比がある種の抒情性を醸し出す。 糸井さんは本作を「妙―ジカル(妙なミュージカル)」と名付けた。音楽と歌とダンスが登場するのだが何の違和感もなく同居出来ているのが、他のミュージカル作品以上にスムーズなのに驚いた。物語文脈と音楽との世界観の整合性が出来ているのか?俳優たちの個性に応じた形でプロダクションされたからなのか?見ていて気持ちがいい。関係性の中での動きや配置、振り付けが出来ていて、それに応じた楽曲や照明のすべてがはまっている。結婚氏の際にキカ君が私たちに向かって「ありがとう」と祝福されるシーンがあるのだが観客席にいるのに結婚式場にいるような感覚に襲われた。この大きさの劇場だから出来ることがあることをわかった上でのことなのか?音楽のセットリストがあれば何度も聴いてみたいと思わせてくれる。そして、映像化したらどんなものになるのだろうか?などということも想像した。最後の鼠たちがキカ君のアパートの部屋にやって来るシーンで何故か号泣だった。不在をこうして描くのか?と感動しながら震えた。私の近い未来のことなども想像し、ここで描かれていることはもはや他人ごとではなく多くの人が感じるだろう普遍的な意味が込められている。前作の「ガラスの動物園」もそうだったが、毎回違うテイストなのに生涯の記憶に残る舞台を作り続けることが出来ることに驚く、とともに新幹線で移動して来てでも観に来ることが出来たことに感謝した。上演時間1時間55分。3月22日まで。平田運輸株式会社(兵庫県・加西市)が協賛してくれているらしく、チケット代が安くなっている。公演詳細は以下。https://shigeru-kikaku.com/mickey-island
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by haruharuyama
| 2026-03-21 09:36
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