「かさぶた式部考」文学座(@ピッコロシアター大ホール)作:秋元松代 演出:松本祐子 出演:金沢映実 八十川真由野 石井麗子 名越志保 木津誠之 山森大輔 髙柳絢子 越塚学 柴田美波 宝意紗友莉 杉宮匡紀 鈴木結里 森 寧々 成田次郎 佐藤柊佳
ココロに沁みる傑作。母親の子どもに対する無私の思い。本当の利他とはこういうことを言うのだろうか?決して自己犠牲ではなく結果を受け容れて誠実に清貧に生きる潔さが見えてくる。「これで、いいのだ」というバカボンのパパの言葉を思い出す。まさに「これで、いいのだ」という結末へ向けて大きな物語がうねりだす。内容の概要に関してはさすが文学座!HPに書かれている文章がすばらしい。以下参照ください。
https://www.bungakuza.com/kasabuta/
久しぶりに大笹吉雄が新聞の劇評で激賞していたのを拝見した。大笹さん85歳!私は残念ながらいままで秋元松代の劇を見たことがなかった。ものすごく激しい。これが書かれたのが1960年代の後半。まだ戦後の名残が残る高度成長期の日本。地方から都市に人が集まり、公害などの社会問題も同時に生まれてくる。格差が生まれはじめ、人々は不安を持つようになる。そういう混沌とした時代、高度経済成長でいけいけの人が生まれるとともに、不安が増大した人たちを救うための新興の宗教団体などが登場し拡大していく。安保運動が拡大し、体制への批判が拡がる。そうした時代の空気を敏感に察知し反映させてこの戯曲が生まれたのではないか?演出は大御所の素晴らしい演出家でもある松本祐子!(これを書くのにプロフィールを調べていたら、何と大阪府枚方市出身!ひらぱーの聖地!俳優の岡田准一といい!枚方すごいやん!私は淀川をはさんで枚方の対岸の高槻で育ちました。笑)抜群の安定感のある演出。そして音響と照明、美術や衣装なども含めて高い完成度。さらには文学座という来年創立90周年を迎える劇団。俳優たちの年齢層の幅の厚さが舞台にも厚さを加える。
冒頭は嫁と姑の話なのか?と思いながら見ていて「華岡青洲の妻」のことを思い出しながら見ていた。しかし、後半になって、これは母子の物語かあるいは女性の自立の物語ではないだろうか?と考えるようになった。秋元さんの書くものにはそうした女性に関する想いがあることを文学座のHPで松本さんが語っておられるのを見て知った。以下、引用する。
私が秋元松代作品に惹かれるのは、ちっぽけで差別されてきた女という存在が、理不尽で嘘に満ちている社会において、怒りの焔を消さないで生きている姿を書き上げているからです。怒りと共に深い大きな優しさを感じます。愛とは、神とは、信仰とは、美しさとは何なのかという根源的な問いが、方言というその土地の歴史と風土を感じる言葉で、投げかけられています。
以上。まさにこの言葉が投げかけるすべてが舞台から立ち上る。エンディングシーンで母親がおくどさんに一人、火をくべるシーンがある。火吹き竹を使っておくどに息を吹き込むとその炎が突然明るくなる演出があり、なぜだかそれを見て泣けて来た。まさに深い大きな優しさを描いている。上演時間休憩入れて2時間55分。
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