青年団の役者でもある、松井周の作・演出。
松井の作る舞台はなかなかに刺激的である。
前作の「地下室」では、自然食品販売会社で働く人たちの独特のコミュニティを描き、
本作では、ある地方の村の独特の風習を描く。
もちろん、その風習はフィクションであるのだが、現実的に
そのようなことがあるかも知れないと思わせるところに
松井のチカラが見えてくる。
舞台は相撲の土俵のようになっており、天井から日常的な
様々なものが吊るされている。
そこの村の出身だった、娘が東京の夫を連れて戻ってくる。
その若い夫は、娘を育ててくれた叔母とセックスをし
新しい子孫のタネを植え付ける事を強要される。
最初、若い夫はとまどうのだが・・・。というような独特の
世界観が展開される。
いつも松井が描くのは狭い共同体の中で行われる特殊なこと。
僕たちが普通に見ているとおかしいだろうと思うのだが
彼らは、そこの共同体にいると、そのルールが普通になってくる。
というか、そのルールに従って生きていく方が心地よいものに
なっていくのだろう。
それは、実は、会社や学校なども同じことかもしれない。
多様なものを多様なまま受け容れるということが日本人的な感覚から
すれば非常に難しいことからこのようなことが起こるのだろうか?
もしかしたら日本人だけではないかも知れない。
カルト教団の思考回路とまったく同じである。
そんな、ことを暗に伝えてくるのが松井周の舞台の特徴である。
相変わらず、古館寛治の声がよく、内に秘めた狂気が見るものを釘付けにする。