これはもともと「パーティあけ」という大人の麦茶5杯目公演の
脚本がベースとなっている。
当時、この舞台に感銘を受けた僕は、
主宰の塩田泰造に仕事を依頼する事にした。
今回キャストが追加になったりして、
さらなるエンターテイメント溢れる舞台になった。
物語はある窓拭き職人と
ビルの中の喫茶店で働くウェイトレスが中心となる。
カフェのウェイトレスが無免許で公道を走っていると
自転車に乗っていた窓拭き職人をはねてしまい
大怪我を負わせるというもの。
被害者の窓拭き職人は加害者の彼女に惚れており、
それを知った窓拭き職人のパートナーは・・・。
というような物語がベースとなる。
事故の際、ウェイトレスの横には教習所の教官が乗っており、
はねた車は教官の車で、たまたま病院の前で事故が起こり、
それを見ていた入院患者(前田憂佳・ハロプロエッグ)が病院に通報し・・・。
といろいろな人物が絡んでくるのだが
塩田泰造はその関係性を巧みに処理していき
とってもわかりやすい形で見せてくれる。
本作は、いつものハッピーでやさしさに満ち溢れただけの
塩田ワールドでは収まらない。そこに、強い魅力を感じた。
まるで映画監督のキム・ギドクのようなテイストが
この舞台の底には流れている。
そしてその倒錯した関係性がいつか明るい兆しを
示し出すような感覚を発して舞台は終わる。
窓拭き職人のパートナーである池田稔は、
加害者である長澤素子を追い込む。
長澤の追い込まれ方がいい。
これは長澤なくしてはありえない演技。
おどおどびくびくしながら自分を責めしかも出口がない。
彼女が被害者で入院してしまった
中神一保に清拭をするシーンは印象的だった。
今回、ハロプロエッグから前田憂佳ちゃんが出演している。
中学1年生になったばかりの彼女の純真無垢なところがうまく出ていた。
最初は小学生かと思った。
しかし、こどもの純粋無垢なところが逆に
残酷に働く面もあるのだよと舞台は暗に教えてくれる。
前田の純真な瞳が逆に強く突き刺さってくる。
人生にはその年齢でないと表わせられない、
そのときだけの輝きみたいなものがある。
そこにいるだけでいいという、稀有な人生の瞬間に
出演できた前田憂佳は幸福である。
初演にはいなかったキャラクターを上手く生かすことが出来た。
同室の入院患者の並木秀介のキャラクターがいい。
出来れば、彼と看護士の大澤桂子の
新たな行く末を見てみたいなと思った。
でも、ストーリーが変わっちゃうか・・・?