中島淳彦の脚本・演出。
中島の脚本は多くの人々の気持ちを捉える。
人情味溢れるスタンダードな舞台とでもいったらいいのだろうか?
鈴木聡や永井愛などがと近いような位置にいるのだろうか?
少し、古い感じもするが、
そのことが多くの世代の共感を得ることもまた事実。
中島ワールドは多くの演劇人から求められるようになってきている。
この舞台は、渋い役者たちが充実している。
佐藤B作、角野卓造、すまけい、阿知波悟美などなど。
彼らの年齢から来る人生の滋味みたいなものが滲み出してくる。
人生の後半部分を生きているものたちが醸し出す、
独特の悲哀が愛おしさに転じる。
舞台はフィリピンの秘境にある小さな島のリゾートホテル。
欧米の人たちはこういった秘境的なリゾートホテルを
以前から利用していたらしい。
例えば、アマンワナというモヨ島にあるアマングループの
リゾートホテルがあるが、まさしくそんな感じなんだろうか?
飛行機で移動し、車で揺られ、船で揺られてようやく到着する。
ここに、以前日本兵だった男が登場する。すまけいである。
彼は脱走兵であり、現地のフィリピンの女性と結ばれて
子どもをもうけている。
そのころ、グアム島で横井庄一が見つかり、
ルバング島からは小野田少尉が帰ってきた。
その少し後の話である。
外務省の役人だった、角野が、
外務省をやめてこの島のホテルのマネージャーをしている
川田希を追いかけてくるところから舞台は始まる。
その角野を厚生労働省の役人である。
友人の佐藤B作が続いて、追いかけてくる。
基本的にはこの二人の織りなすドタバタコメディといってもいいかもしれない。
その笑いの中に、人間の悲哀やヒューマンな部分が織り込まれてくる。
予定調和的といったらそうかもしれない。
しかし、その中に普遍的なものを見い出し、観客たちは感応し、涙を流す。
世代を超えてそれは変わらない。
そんな舞台を中島淳彦は作りあげたのだろう。
元日本兵が、日本に戻らないという選択肢を残して。