仕事のための資料としての本。
いままで、このような問題を正面から扱ったものはなく、
どんなことが書いてあるのだろうと興味を持った。
マス媒体での表現物はいろいろあるが、
特に広告というものは企業自体と完全にリンクしているわけなので
表現する際に様々なことに留意して、
人を誹謗中傷したりしないようにしなければならないということが
いろいろな事例を基に語られている。
2004年発行なので、
最近のインターネットでの事例などはあまり取り上げられてなく、
その辺りのことを突っ込んで知りたかった。
WEBでの表現の方がマス広告よりも
規制が緩いような感じがしており、
それは気のせいなのかもしれないが、
実際のところはどうなのだろうか?と思っていたので、
その辺りのところを確認しようとしたのだが、
結局本書では、その部分に関しては得られるものはなかった。
ただし、本書で語っている、
人権を大切にして広告表現をしようということは
何ら間違っていなく、その基本となる考え方は
WEBであろうがTVであろうが新聞であろうが同じことだ。
差別表現について詳細に記述されている。
部落差別、人種差別、男女差別、国籍差別、民族差別、などなど。
差別に関する表現は人間が社会的な生活をすることによって
自然発生し、その構造を根本から無くしていくことは
ものすごく大変なことであるということは
歴史的な過去の事実たちが証明している。
NHKは「差別化」という言葉を使わないそうである。
広告の具体的な事例がいくつか取り上げられている。
読んでいると広告の記憶の中からその事例を思い出して、
当時の新聞などの記事に書かれていたことを思い出したりする。
方言の話のところで関西弁に関して、
関西弁は好色で金銭にうるさくてケチな男
というイメージがあると書かれている。
僕自身、関西人であり関西弁を話すのだが、
なるほどこのような見方もあるのかあ?と驚いた。
自覚がなかった。
また、イスラム文化のことについて書かれていた事例に関しては
全く知らないことだった。タイヤの網目のデザインや、
靴の踵のデザインがアラビア文字に似ているということで
イスラム教徒団体から抗議が来て回収になったそうである。
「祭日」という言葉も宗教的な意味合いのある言葉なので、
「祝祭日」といよりも「祝日」のみを使用するというようなことも書かれていた。
作者の宗像氏は、
最後に日本国憲法について言及する。
「広告宣伝活動に携わる人間は一度は憲法に目を通すべきだ
という意を強くしましたので、ここに掲載しました。」と。
改めて憲法を読んで、当時の
日本語にたいする細やかな感覚と
日本語の美しさと
日本語の意味の多様性についても同時に感じた。
言葉で、意味をきちんと伝えることの難しさを痛切に感じた。