土田英生作、宮田慶子演出。
MONOという劇団を自ら主宰していた土田英生が
文化庁の海外研修制度で英国に行ったのは何年前になるだろう。
劇団がこれから売れ出しそう、というところで海外に出てしまい、
見続けてきた人たちから忘れられてしまうということは少なくない。
しかし、逆に考えると、そんな短期間で忘れられてしまうものなんて
本当に価値のあるものなのかという意見もある。
日本でのアートへのかかわり方が問われるひとつの事例である。
野田秀樹は、夢の遊眠社をその劇団のピークで解散。
単身、ロンドンへ渡る。帰国してからの、彼の演劇人としての活躍は華々しい。
NODA MAPはチケットがまったく取れず、
次回公演の「THE BEE」なんて何度トライしても
チケットがとれないままだった。しかも、レベルは常に高く、
海外からも高い評価をされている。素晴らしい話である。
さて、本作は、ある地方の村の話である。
エネルギー研究所という施設がこの村に出来、
新参者がやってくるようになった。
その村の喫茶店が舞台になっている。
六ヶ所村の成り立ちを知らないが、
エネ研などという存在自体がそのことを想起させる。
舞台ではその施設から危険だと思われるものが
排出されたりするエピソードが語られる。
その危うい環境の村の中で、
こつことと絵本を作り続けている作家(小林正寛)のところへ、
絵本の大ファンであるという女(那須佐代子)がやってきて
男は2回目の女は4回目の結婚をする。
結婚してからの夫婦の会話がハラハラドキドキものである。
夫のちょっとした言葉尻を捉え、妻は徹底的に夫を追及していく。
夫が何気なく言った言葉に妻は過敏に反応し、
その意味はどういうことなの?と激しく追及するのである。
周囲の人たちが彼女の言動を理解できないと、
彼女は「悔しいっつ!」と叫ぶのである。
普通の人間は、なかなか付き合えない。
4回目の結婚の意味も納得。
しかし、一方では、彼女だけが特別なのかという気にもなる。
彼女はものすごく純粋でまっすぐな人なんじゃあないだろうか?
そういう人に限って現在ではコミュニケーション障害が起きてしまい
上手く生き残れなくなるのかも知れない。
もっと本音だけで語れる世界があったなら、
彼女はそのままの生き方で素直に生きていけたのかも知れない
と思わせられたところがあった。