A社長から頂いたチケット。ありがとうございました。
初めて見る上方歌舞伎
。そして通しで全段を見ること自体が初めての体験。
どんなものかとドキドキして半蔵門から国立劇場へ向かう。
途中に銭湯がある。
この銭湯でA社長と皇居周辺をジョギングするのに
荷物を預けてもらったのが3年前になる。
その頃は、半蔵門の銭湯に戻ってくる頃、
国立劇場から帰る多くの観客に遭遇したものだった。
本作のポスターが美しい。
真っ黒な中に黒い頭巾を被った、玉手御前役の藤十郎が居る。
上方歌舞伎は人形浄瑠璃の影響が大きいのだろうか?
もともと人形浄瑠璃=文楽は上方のものである。
大阪で学生時代Oさんという年上の女性に誘われて、
何度か、大阪,日本橋の国立文楽劇場に
連れていってもらったことを思い出した。
あのときのチケット代、全部Oさんに出してもらっていたなあと、
今になって思った。ありがとうございました。
「摂州」と言うだけあって大坂の話である。
住吉大社、天王寺、そして竜田越えから、奈良との県境へ。
ストーリーは一口では語れない。継母が実の義理の息子に恋をする。
その息子はらい病にかかってしまい。
実家から離れて万代池のほとりにほったて小屋をたてて暮らす。
妾の子はその息子に家督を継がせたくなく
自分が家督相続をしたいと思っている。
様々な思惑が交錯し、そこに息子の許婚(いいなずけ)や、
玉手御前の実の母の親戚にあたる、羽曳野とその夫、誉田主税之助がからむ。
まるでギリシア悲劇かシェイクスピアか?
古典の物語はいつもそうである。跡目争いに家族殺し。
しかし、現代もそんなに変わっていないのではとも時々思うことがある。
これ自体はもともとインドの説話が日本に伝わった
「弱法師」「愛護若」の中世の伝説を江戸期に作られたものなのだそうです。
同じ話が西に伝わってラシーヌの「フェードル」を生んだらしい。
このあたりの教養があれば、さらに面白いのだろうが、
「摂州合邦辻」単体で見ていても人間関係が整理されると、
わかりやすい話に収束される。
喋り言葉と浄瑠璃の言葉が理解できれば
さらにさらに面白いものになっていくに違いない。
そんなことを思いながら江戸の庶民になった気分で楽しんだ。
歌舞伎の型を決めるところで必ず「山城屋!」などの掛け声が入るが、
その掛け声の数が今回とても多いように感じた。
舞台初日だったということもあったのだろうか?
暮れなずむ夕方に公演が終わった。
4時である。
夕焼けになりそうな雲を見ながら
千鳥が淵を九段下方向へ歩いていく。
途中のベンチに座って、家で淹れてきたほうじ茶を飲む。
猫が何匹か遊んでいる。
肌寒くなった千鳥が淵で飲む
ほうじ茶の温かさが身体に沁み入る。
九段下から靖国通りを神田方面へ。
すずらん通りの「東京堂書店」へ。
休日の17時。
このころになると外は暗くなり、店内のお客さんもまばらである。
この書店は時々、あれっ?という本が置いてあって、
そんなに大きくないながらも素敵な書店である。
本に囲まれていると幸せな気分になる。
千鳥が淵で森林浴をし、東京堂書店で書籍浴をする。
ココロと身体がおだやかになる。
そんな経験が出来ました。
夫婦で手提げ袋一杯に本を買って、
竹橋から地下鉄に乗って帰る。
そんな休日=「文化の日」でした。