井上雄彦のことをほとんど知らなかった。
もちろん、「スラムダンク」の作者であり、
「バガボンド」の作者であることは知っていた。
硬派な印象のある漫画家である。
井上氏自身が取り上げている内容がそうである。
バスケットボールと武道。
そこには一筋のキチンとした線が通っている。
このイベントもその延長線上にある。
三浦半島にある三崎高校という学校だったところを
3日間貸しきったイベント。
そのイベントの模様を、準備段階から終了まで
ドキュメンタリーとしてまとめてある。
フジテレビの深夜枠で流されたそうである。
井上雄彦という人間自身が感動的である。
井上自身は、このイベントに来てくれた人、
そしてこれを実行したスタッフの人たちのことをほんとうに凄い!
と感激している。
それは井上自身がものごとに向き合う姿勢に
みんなが感応したからこそ
出来たことだったんじゃないのだろうか?
井上は23の教室全ての黒板を使って
チョークで「スラムダンク」の最終回の10日後のストーリーを刻んでいく。
下書きや構想みたいなものは、あったのだろうか?
淡々とチョーク1本をもって井上はマンガを描き続ける。
イベント開場時に、一人の警備員も立てず、
立ち入り禁止の柵やロープも設けずに、
3日間このイベントを続けて、誰一人も、
黒板に落書きしたり、消したりするものがいなかったらしい。
来場者の気持ちがまっすぐに伝わってくる気がした。
全て手作りで、実際の場所に来て出会い体験するということが、
このネット時代にいかに重要で、深く届くものになることであるかということを、
井上雄彦は「スラムダンク」が1億冊売れたことをきっかけとして
教えてくれたのかも知れない。