子供と大人のためのダンスと銘打った公演。
実際、子供たちがたくさん来ていた。
子供たちが公演中ものすごくおとなしく見ていることに驚く。
ストーリーを台詞で語る、演劇的な公演よりも、
こういったダンス作品の方が子供たちの気持ちを惹き付けるのだろうか?
30分と25分くらいのふたつの公演という短さも
子供たちの集中力を保てた原因だろう。
入場料が大人2000円子供1000円と破格の安さである。
さいたま劇術劇場の支援のたまものでしょうか?
ダンスカンパニー「イデビアンクルー」主宰の井出茂太と
大人計画などにたくさんの振付を提供している
康本雅子の二人が交互に振付をし、二人で踊るというもの。
康本雅子は先日のNHK教育TV「トップランナー」に出演されていた。
井出茂太が振付をした「かみなりむすめ」から始まる。
康本演じる、かみなりむすめ。
下界の男の子、茂助を演じる井出茂太。
井出さんらしい奇妙な動きが流れるような動きに変わっていく様が
見ていて魅力的である。
井出さんがきちんと踊っているのを見るのは久しぶりである。
かわいらしい、マスコットのような体型からは
優雅で流れるような動きが溢れ出す。
柔らかい動きの中に、日常の仕草からヒントを得た奇妙な動きが同居する。
その変化が素早く流れていく。
ここに井出茂太のダンスの魅力がある。
康本雅子はその愛くるしい顔と八頭身とも思える
しなやかな手足とともにダイナミックで優雅なダンスを踊る。
愛くるしい顔は表情がどんどんと変わり
動きなのかで最もチャーミングに見えてくる。
20分間の休憩を挟んで、
康本振付の「さんねんねたろう」。
ダンス公演なのに何故、この寝てばかりいる男の話を選んだのだろうか?
布団を効果的に使い二人一役的な手法が面白かった。
康本の振付は井出のそれとは全く違う。
わかりやすく言うと、民族舞踊のテイストが様々に組み合わさって
出来た動きとでも言えばいいのだろうか?
固い動きと痙攣のような動き、そしてダンスとは思えない所作が行われる。
茶の湯や華道の所作にも似た、伝統芸能の所作にも似た、
民族舞踊の様々な所作にも似たものが切れ切れに提示されるのである。
こんなダンスはあまりない。
井出さんの振付の流れるような優しさみたいなものはなく、
踊ることによってトランス状態になったような感覚を
再現しようとしているのだろうか?
康本雅子の秘密はいったいどこにあるんだろう?
3月のソロ公演が楽しみである。