よりみちパンセシリーズの中の1冊。
「パンセ」とはフランス語で思索・思考の意味だそう。
またパスカルがキリスト教護教諭のために書いた断章の集成とも。
1670年刊。瞑想録とも記されている。(「広辞苑」より。)
そのよりみちの思索の中で「美術」が語られる。
森村泰昌は日本の代表的な現代美術家である。
彼が自ら出演している、名画そっくりの写真は一度見たら忘れられない強さがある。
この人は、女装趣味がある人なんだろうか?
と最初思っていたのだが、本書を読んでみると、
純粋な美術家としての活動を真摯にやっているという印象を受けた。
もちろん、男性にも女性的な部分が、女性にも男性的な部分があり、
そのどこを表現するのかというようなことを森村さんは語っていた。
なるほどと、納得。
森村さんが名画の女性を演じるのは、
歌舞伎役者が女形を演ずるのにも似たようなものかもしれないなと思った。
残念ながら行く事が出来なかったが、2007年に横浜美術館で行われた、
「森村泰昌展」はなかなか刺激的だったと見に行った人に伺った。
本書の中で語られていることは、実はものすごく普通のことである。
「美しい」ということ「美しい」と感じることには様々な側面があり、
個人によってその感じ方は違う。
しかし、そのことを考えることによって「美しい」の多様性を知り、
人生や世界の奥深さと面白さを知ることになるのですよ。
ということを、手を変え品を変え語っているのが本書の大きな特徴である。
この「よりみちパンセ」シリーズは
小学校高学年から高校生くらいに向けて出版されているものなのだろう。
この年代に向けて、難しい漢字などにはルビがふられている。
新しいジャンルのことを学ぶ際に、
中学・高校生向けの本は非常に役に立つ。
知識がそんなになくても読んでいけばわかるということを
基本に書かれているからというのが、最初の理由である。
さらに、テーマの中で物事の中心にある本質的なものを
いかにわかりやすく提示できるかということに注力されて書かれているから。
ということがふたつめの理由として考えられる。
本書の中から印象的なフレーズを引用する。
芸能とは絶対にウケないといけない世界である。
芸術とは、ウケなくてもやらねばならない世界を持つことである。
また、
知るだけでは頭でわかっていても気持ちがついていけないということがあります。
ですから、やはり感動できることがとても大事なんですね。
感動できれば、もうあなたはそれを美しいと感じている。
感動とともに、「美」はあなたに宿ってくるはずです。
と、ココロが動くこと、頭でっかちではない身体で感じることの
重要性を森村さんは何度となく語っておられました。