6人の男兄弟と言えば「おそ松くん」である。
これは六人の一卵性の六つ子であるが、
この舞台では長男から四男までが四つ子として、
五男がその後に生まれ、四つ子の十五歳下の養子として六男がいる。
その家族の物語である。
母親は随分前になくなって父親が床に伏せっている状態である。
父親が危ないかも、そしてみんなに話があるということで
兄弟が一斉に集まってくる。
次男と四男には妻がいる。五男は彼女を連れてくる。
「MONO」が結成されて13年ぶりの客演の公演だそうである。
そうだったのか?
13年前に客演だった金替康博(元:時空劇場)は
いまやMONOの看板とも言える俳優である。
じゃ、客演ちゃうやん!
今回、舞台に立っている俳優さんたちも
これから「MONO」に入るのかも?
もとい。作・演出の土田英生は文化庁の芸術家派遣制度を活用し、
2003年から2004年にかけて1年間ロンドンに留学に行った。
野田秀樹も以前、この制度で1年間ロンドンに行った。
野田はその直前に、劇団「夢の遊眠社」を解散する。
土田は解散しないままロンドンへ行った。
そして、ロンドンから戻ってくるとスロウペースではあるが着実に、
「MONO」という集団として年に1回くらいの公演を行っている。
稀有な例である。
京都の集団だからできること?
京都のやわらかな、ゆったりとした、商業とは縁のないような
仕事の仕方がこういうことを許してくれるのかも知れない。
兄弟の関係とどこか似ているような。
土田は、現在、日本テレビでドラマ「斉藤さん」の脚本を執筆している。
テレビドラマの脚本を執筆しながら自身の演劇の台本を書き、
演出することは本当に大変なことだったろう。
しかし、舞台での四男役の土田英生を見ていると
そんなことは微塵も感じさせない。
むしろ悲壮感というよりも何もかも抜けてしまった
脱力感とでもいうのだろうか?
その四男の設定が何よりも面白かった。
戸籍の関係で小学校3年生まで学校に行けなった。
4年生で初めて学校に行ったということは
どうなるのかということのデフォルメされた例がここにある。
大きな「笑い」を誘う。
妻との関係性が変化していく過程も面白かった。
全体に良く出来たウェルメイドプレイである。
破綻するところは微塵もなく、実は四つ子たちは
一卵性の四つ子ではなく、
四人ともどこからかもらわれてきた養子であることが
死の床の父親から言われる。
その後、兄弟の関係は微妙に変化する。
変化したまま関係性が完全に途切れるケースをいくつか知っているだけに、
この兄弟の太さが微笑ましい。
そこから新しい兄弟の関係を模索し始める。
舞台後半で、これらの関係全てに、
ある強い緊張関係が生まれる。
このシーンが僕は好きだ。
血がつながっていない兄弟のこと、
妻の不貞のこと、母の不貞のこと、父親のこと。
そこを全て受け容れて乗り越えて行く強さが、
人間にはあるということを教えてくえる。
土田の次回作も楽しみである。
現在、脂の乗った、大人として
人間を描ける脚本を作ることのできる作家の一人である。