ジャンヌ・ダルクとは「大辞林」によると、
(1412-1431) フランスの国民的英雄。
東部の小村ドムレミーの農民の娘。
百年戦争後期、フランスの解放を神に託されたと信じ、
シャルル七世から授かった軍隊を率いてオルレアン城の
包囲を解くなどフランスの危機を救った。
のちイギリス軍の捕虜となり、
宗教裁判で異端の宣告を受けてルーアンで火刑となったが、
1920 年聖女に加えられた。
弱冠19歳で宗教裁判にかけられ火あぶりにされた
ジャンヌのことが、史実に従って映画化されている。
極端にシンプルに切り取られた画面は整理されており、
その研ぎ澄まされ方が潔い。
モノクロームの画面というのはここまで美しかったのかと
思わせてくれる力が画面の隅々にまで漲っている。
モノクロームの諧調をここまで表現できる技術に感嘆!
とても1927年の映画とは思えない。
この映画は20コマ/秒で撮影されている。
(現在の映画は通常24コマ/秒。)
ジャンヌはここでは顔のアップが中心となる。
極端によったカメラが微妙な表現を切り取って行く。
彼女が目に涙を浮かべ、そして涙を流す。
19歳の娘にとってこの宗教裁判は過酷な試練だったろう。
一度、彼女は異端者ではないと信念を曲げたにもかかわらず結局、
神の声のままに本心を告げる。
15世紀のこのころは魔女裁判という言葉もなかったらしく、
異端者という扱いを受けたのである。
カール・ドライヤーは冷徹に現実を記述する。
火あぶりのシーンなど、これでもかというくらい徹底的に映し出す。
映画の冒頭に記述されていたが、
随分と検閲や削除を求められていた映画だったらしい。
宗教裁判での移動撮影の美しさといったら、ジャン・ルノワールの比じゃない。
また真俯瞰からのショットが印象的。
今回は柳下美恵(無声映画伴奏者)の生演奏とともに鑑賞した。
グラウンドピアノの音が気持ちいい。
初見のときはサイレントの状態で見ただけに
随分と印象も違って見えた。