やり続ける事がいかに大変なことであるのかと思うのに
三年目に突入した「志村魂」である。
今回から劇場を池袋劇術劇場から天王洲銀河劇場に。
ここの劇場は客席と舞台が近く親密感がある。
そして三年目の公演は、本当に素晴らしいものに仕上がった。
第一回公演の記憶と比較すると、演技と演出のレベルが、
この一座のレベルが確実に上って来ている。
やりつづけることによって出来てくるものがあるのだなと確信する。
構成は毎回、同じような感じである。
「バカ殿様」のくだらないコントがあり、
その後「コントライブ」がある。
青春ドラマのコントが面白かった。
「ハゲ」をテーマにしたそれは、
志村けんが出てくることにより笑えるものになる。
欲を言うと、朝長浩之の脚本はやや古風な感じがあり
特にオチのところにそれを感じる。
その部分をもう少し現代的にアレンジするような解決策がないだろうか?
もちろん、レベルの高い中での話なのだが。
「8時だよ、全員集合」は生番組だった。
どこかの会場の舞台に建て込んでやっているものを
TV番組として放送していた。
その感覚がこの「志村魂」では甦る。
こうやって生にこだわる芸人さんがいるということが
非常に「お笑い」の世界では大切なことでないかと思う。
TVという巨大な怪物に消費されてしまわないための方法が
ここから見えてくる。
ライブにこだわるというところが、
30年以上コントを続けて来ている志村さんの凄いところである。
会場には子供連れのお客さんから年配の方々まで
老若男女の人たちが会場に来ているということが「志村けん」の人気を物語る。
このような全世代的な喜劇人は、本当に少なくなってきている。
日本の喜劇人の第一人者として「志村けん」の名前は、
今なら、最初にあげられるだろう。
お笑いコントライブなどは大盛況である。
しかし、彼らの笑いは世代を限定する。
全世代的な喜劇人はもう出てこれらないのか?とさへ思う。
今年で三年目になる津軽三味線の腕も年々上っており、
今回の「風林火山」(NHKの大河ドラマのテーマ音楽)には感動させられた。
最後に松竹新喜劇である。「人生双六」。
ラサール石井潤色&演出の舞台が冴え渡る。
一昨年の「志村魂」を見たときには、
何故この時代に「松竹新喜劇」をやるのか?その時代性は?
などと思ってみていたのだが、今回のそれは全く違った。
俳優と演出のレベルが確実に上って来ている。
オリジナルの脚本もよかったのかも知れない。
一回目の公演では出ていた藤山寛美くささみたいなものがなくなり、
志村けんとして演じられているのもよかった。
また、ダチョウ倶楽部の、上島竜平が好演。
彼の好演なくしては今回の舞台の成功はなかった。
シーンのラストにまるで歌舞伎か文楽かと思わせるような
見得を切り、型を決めるシーンが出てくる。
その演出が深みを出し、松竹新喜劇を現在に甦らせる
一つの新しい方法ではないかと思った。
藤山直美さんとも長く舞台を作り続けている
ラサール石井さんだから出来たことが確実にある。