マスメディアは必要か、と副題にある。
本書はインターネット関連の技術が発展して、
いままでのマスメディアの構造が根本的に変わりつつあり、
その大変革期の今、マスメディアも大きな変化が求められていることを描いている。
このマスコミの危機に対して筆者は楽観的である。
何故なら、マスメディアに従事している人間の多くは優秀であるという前提を持っている。
彼らが、いままでのやり方を見直して
新しいスタイルでやって行こうとしようとすれば、必ず解決策は見つかり、
そこから新しい業態や方法が必ず見つかる筈だと考えている。
その解決策を実行するのに今後経営陣に求められていることは
環境の整い方とタイミングが重要であると説く。
デファクトスタンダードを目指すためには
その整備環境を見計らいタイミングを決めていくということが
大きな経営判断になる。
I-PODにしてもI―TUNESなどのソフトウエアとサーバーの開発と
PCとブロードバンドの普及の絶妙なタイミングで必要な要素が揃ったので
爆発的な普及をしたのではないだろうか?
たとえば、鉱山会社が隆盛を極めた50年前と今とでは
全く環境が変わっている。
その環境変化に対応していくための方策を考え続けることである。
そうして環境の変化に応じて適切な業態に変化していくことこそ、
僕たちが考えながら進むべき道である。
ある業態の大きな環境変化は30-40年ごとに訪れる。
その意味では、広告業界は変化に対して緩やかな対応をしていたのかも知れない。
しかし、さすがにそうも言っておられなくなったことを
多くの人が肌で感じるようになった。
そのためにやらなければいけないことは一つのことに集約される。
面白いと思えるコンテンツを作ること。
そのことは普遍である。
人は面白いものや体験を求めている。
そのためにどのようなメディアを組み合わせてどのようなコトをおこし
発信していくのかということが求められていると思うのである。
同時に本書では今後のコンテンツのありようの一つとして
深く狭く届くコンテンツというものも大きな武器になりえると語る。
ロングテールの思想である。
動画にもその思想は演繹される。
テレビVSインターネットの項で筆者は言う。
1974年にTV広告費は新聞を抜く。
そしていま、アテンションだけを求めるマスメディア広告の売り上げは減る。
それ以外のビジネスモデルを模索することが必要である、と。
筆者は語る。動画の発信先は最早TVではなく
大きなネットサーバーの中にありそれを視聴者が自由に選択して
自由に見る事が出来るものに変わっていくだろうというような意味の事を。
それに関しては同感なのだが、そこで必要になってくるのが
その多大なる情報を各嗜好に合わせて編集していく作業が重要になってくると思われる。
アマゾンのレコメンド機能の動画版とでも言えばいいのでしょうか?
U-TUBEにも似たような動画ということで編集され提示される
機能がついているが、そのさらに高度なものが出てくれば、
TV番組はスポーツなどの生中継やニューズなどを除いて、
優位性が崩壊してしまうと思われる。
最も危機意識が高いのは地方局で配信業務のみを請負い、
コンテンツ制作能力がないところ。
そこでは既得権益が崩壊するのと同時に
彼らの存在意義も崩壊していくであろう。
本書ではTV以外にもラジオ、新聞、雑誌などのメディアについても語ってある。
どこかに変化していくための方策がある筈だという論旨で筆者は進めてくれる。
そこから新しいモデルを考えるのは我々。
そのための考えるヒントを与えてくれるのが本書の役割なのかもしれない。