台風が関東に接近していた。
三鷹の駅から劇場に向かっていると雨が降りだした。
劇場に入る頃には本格的な降りになる。
ピチチ5の作・演出の福原氏は小劇場界で
独特のポジションを築いている。
職業演出家的な側面を持っているかと思ったら、
本体の「ピチチ5」の芝居では熱いシュールでハチャメチャな舞台を作る。
エンディングへ向けてのカタルシスをいまだに持っている作家と
言えばいいのだろうか?
それとも、このスタイルが、また新しいのだろうか?
本作は大きく分けて3つの部分から構成されている。
まずは「国分寺のキースリチャーズ」と題されたもの。
場末のスナックから話は始まる。
演歌が流れている千葉雅子が経営するぼったくりスナックの横に、ロックバーがある。
昔のロックンロールを流すバー。
そこに集っているおじさんたちは過去にバンドをやっていた者たち。
30歳過ぎまで好きなバンドをやっていたのだが食えなくなり、
一人は事務用機器のセールス、一人はタクシー運転手、
そして一人はこのロックバーを赤字になりながらやっている。
才能がないのに好きな事をやっていたものたちの
哀愁溢れる酒場である。
お店の女の子(小林由梨)が第三者的な視点で彼らを捉える。
彼女の喋りの今時感がいい。
三部の物語は緩やかにつながっている。
続いて「花巻のスカーフェイス」。
ここで出てくるのは小説家や歌人である。
宮沢賢治、萩原朔太郎、そして、
しまいには藤子 不二雄まで出てくる。
舞台は岩手県、花巻から青森のねぶたまで。イメージが拡散し、
現実と空想が交錯する、ピチチらしい展開である。
男性器をかたどったバイブのようなガチャピンが出てきたのには驚いた。
そして、最後は「蒲田の行進曲」である。
まさしく、つかこうへいの名作をベースに新たに書き直したもの。
福原はこれを深作監督の映画を見た記憶で書いている。
つかこうへいの舞台は見ていないそうである。
しかし、その舞台の熱さが、以前のつかこうへいの舞台のようである。
そのような熱さを秘めた舞台が
今、上演されていることが面白いなあと思った。
この三部作はミュージシャン、作家、映画監督と
俳優というモノを作るものたちの悲哀に満ちた物語である。
現実の商業主義的なものへの愛憎を込めたものがここにある。
多少、バラバラな感じはあるのだが、
様々な俳優を集めて一本の太いエネルギーを作り出そうとした
試みは評価できるのではないだろうか?
帰りは雨が、本降りになっていた。