まず、本書が出版されたことを喜びたい。
「ドラゴン桜」はテレビドラマにもなったので知っている人は多いだろう。
その漫画から出てきたスピンアウト企画の本である。
大衆性を持ちえる漫画からのアプローチと言うのがいい。
入って行きやすいのである。
僕がモノゴコロついたときに読み始めたのが
「ぼくら」「少年マガジン」「少年サンデー」だった。
「ぼくら」だけは買ってもらう事ができたのだが、
それ以外のマンガ本は近所の散髪屋に行って読ませてもらっていた。
漫画を読むことによって字を覚え、日本語を覚えた。
漫画週刊誌を読むという習慣は「めぞん一刻」の終了まで続いた。
単行本は時々買って読んでいる。
先日ついに「スラムダンク」と「バガボンド」をヤフーオークションで落札した。
本書では、受験勉強しているときに必ず考えることについて各界の先生が語る。
それは「何故、勉強するのか?」ということである。
ここでは「なぜ学び、なにを学ぶのか?」という言葉が使われている。
「学ぶ」という本来の持っているものの魅力を知ることによって
勉強することが楽しくなるということは絶対にあるだろう!
人間の知りたいという欲求は誰にも抑えることは出来ない。
その原点に戻って考えてみようというヒントが本書の中には書かれている。
6時限+課外授業という構成になっている。
国語の金田一秀穂先生、数学(計算問題)の鍵本聡先生、
数学(図形問題)の高濱正伸先生、英語の大西泰斗先生、
理科の竹内薫先生、社会の藤原和博先生、
そして課外授業は、心理の石井裕之先生。
本書は16歳に向けて書かれた本とあるが、
社会人になってから読み始めても中学生が読んでも十分に面白い内容だと思う。
面白いと感じるのは自分自身である。
個人的におもしろいなあと思ったのが数学と理科だった。
高校生の頃の僕は、理科や数学が苦手だった。
特に、物理は全く理解ができないまま1年間が終了し、
名前だけ書いて3点もらった記憶がある。
数学は微分積分で完全にわからなくなり
その時から、完璧に理科系に行く事を断念した。
本書を読んでいると物理の原理と微分積分の計算方法は
完全にリンクしているとのこと!
両方理解できなかった僕は、未だに何も理解できないのかも知れない。
が、科目を超えてまたがるものがあるということが面白かった。
学科なんて便宜的に決めたものである。
世界は総合的になりたっている!というのはまぎれもない事実。
そこには物理も生物ももちろん言葉を使う国語も英語も、
そして数学なども一緒くたになっている。
国語の話で面白かったのは「大切なのは情緒でなく論理である」という言葉。
言葉を論理的に組み立てていって相手に理解してもらう
そのコミュニケーションの基本を形作るのが国語という学科のもつ
大きな特徴なんだと思った。
「言葉」はまず「正さ」が重要であるという言葉が残った。
また数学で学ぶのは、知識ではなく、
「ものの考え方や論理の進め方などを学ぶ学問」であると。
これは社会人になったらますます重要なものであると思った。
論理的思考を経て仮説などを導く必要がある。
それを日常的に行っているのが社会人である。
とすればその思考方法を見につけるというトレーニングは
高校の部活で身体を作っていくのと同じようなことと言えるだろう。
最も面白かったのが僕が最も苦手だった理科のお話。
竹内薫先生の話はとにかく面白かった。
「間主観性」という言葉が出てくる。
客観と主観の中間にたって物事を見つめてみようとすることである。
コレはもともと哲学用語からの援用だったそうなのだが、
原子や電子を観測するところから来ているものだそうである。
この立場に立って物事を見ていくと人の痛みがわかると言う。
理科の時間にそれを言う竹内先生は凄い!
そして、この年になってもう一度物理学とはいかなる学問かということを
考えて見たいなと思った。
竹内先生のオススメの書、「ご冗談でしょう、ファイマンさん」(@岩波書店)
を購入してみよう。