著者の岸さんの経歴が面白い。
東海大学海洋学部水産学科を経て、
早稲田大学大学院国際情報通信研究科を修了、
中央大学研究開発機構専任研究員を経て、
2004年に電通に入社。
名古屋で二年雑誌・メディアマーケティング部を経験したのち
2006年東京本社IC局へ。
今年の7月にコミュニケーション・デザインセンターが新設されたのにともない、
IC局員はそこへ。
既に、局の名称が「コミュニケーション・デザイン」なのである。
こういった経歴を持つ「考える頭」を持った人々が
これからどんどん重要な戦力になってくるのではないか?と思った。
そうやって様々なジャンルから新しい価値を生み出して行き、
この大企業は新たなステージへ進もうとしているのだろうか?
その最前線で活躍している方の具体的なメッセージがここにある。
メディア環境が変化して生活者のスタイルが変化したら
それに合わせて当然広告、マーケティング戦略も変わらなければならない。
そのことを地道にやって来たことの結果がここに現れている。
岸さんの幸福なところは、新しいことに挑戦したいという
企業の依頼がありクライアントと信頼関係を築きながら
新しい方法を一緒に模索できる環境を作っていけていること。
それは、岸さんを初め優秀な制作者が知恵を集めた結果でもあると言えるだろう。
それくらい、岸さんの手掛けてきたキャンペーンは刺激に満ちている。
本書ではその具体的な事例が紹介されている。
その事例紹介がむちゃむちゃ面白い。
永谷園、ワールド通商、アース製薬、マリエール、漢検DS、などなど。
どれもどうやって発想したのかということが書かれてあり、
お得意との切り結び方についても言及されている。
また何か起きたときのリスクヘッジをちゃんと考えながら
作業をしているという姿に納得し感心した。
特にWEBメディアは、出稿しても変容可能である。
出稿してからがスタートであるとは良くいったものだなあと思った。
出稿してからのリスクをお得意と共有し、
いったんそのことが起きるとどのようにするのが適切なのか?
というところまで想定されてキャンペーンを組み立てている。
ここでは最早、わかりやすく多くの人に届くもの
という概念ではない考え方が現れている。
マーケットとターゲットをとことん分析した上で出てくる深く刺さっていく表現方法を
全てのメディアにわたって考えていくこと。
そのようなメディアがなければ作ってしまおうと思えること。
そのような大きな価値観と発想の転換なしには
このコミュニケーション・デザインというのは成立しないのではないか?とすら思った。
新たな場所を開拓しているその様は
まるで西部開拓のようである。
何もないところに一から何かを作っていくこと。
そして本書にはさらに示唆的なことが書かれている。
「自分が動かないキャンペーンで人は動かない」
そして「ブランデッドエンターテイメントからコンテンツへ」ということが今、
まさに求められ始めているのかも知れないのである。
つまり「本当に面白いもの」を作らなければいけないということ。
身の引き締まる思いであり、同時にワクワクする気持ちもある。
そんな気持ちにさせてくれる名著である。