現代能楽集と銘打った特集の第4弾。
今回は野田秀樹が作・演出を担当。
今年6月にロンドンでまず上演された。
能楽の「海人」がベースになっているので英語の題にすると「THE DIVER」?なのか?
それに加えて、野田は源氏物語と現代の事件をミックスして
この舞台を描いている。
まず、舞台では野田秀樹がソファに座って
英文の「源氏物語」を読んでいるところからはじまる。
おもむろにその本を顔のところにもっていく。
と、本の表紙に能面が描かれている。
そこに囃子が入る。能楽の始まりのようである。
キャサリンハンターが収監されているのか?
外から野田の居る部屋へ連れられてくる。
野田はまず彼女に「今日のお名前は?」と聞く?何だろう?と思う。
ああ、彼女の精神鑑定を行っているのだなと思った。
彼女は誰でもなく、また誰にでもなれる。
「24人のビリーミリガン」のような多重人格者なのか?
その彼女はいったいどんな犯罪を起こしたのか?
突然、舞台が変容する。
その彼女が源氏物語の登場人物になったり鬼になったり。
教養不足で具体的にどこがどうなのかを語ることは出来ない。
が、とにかく、3つの世界を自由に行き来し、
物語もそれに応じて変容する。
最小限の小道具が観客のイメージを通して大きな世界へと拡がっていく。
野田の野田らしい芸当である。
深海の世界で泳ぐキャサリンハンターと野田秀樹。
音と、動きと照明だけで深海の世界が拡がる。
また棒1本がクルマのドアになったり、
扇子が宅配ピザになったりもする。
その小道具の使い方が本当に見事である。
昨年同じシアタートラムで上演された「THE BEE」は
復讐の連鎖を描いた現代の劇だった。
今回のそれは犯罪者が登場する現代劇と源氏物語そして能楽の世界が
交互に現れては消えるので、構造が複雑になっている。
しかも英語上演である。
懸命に理解しようとするのだが、筋を追う事が困難になる。
筋を追うことをあきらめた瞬間に自由になった。
そうか、この舞台の様々な変容に身を委ねていけばいいんだと。
キャサリンハンターの苦悩が前面に現れる。
堕胎のシーンなどは胸がヒリヒリとする。
扇子と赤い布を使うだけであれだけのことが出来るのかと思った。
決して爽やかな舞台ではないが、
その重さの中から見えてくる一筋のものがある。
海の中は、羊水に戻っているように見えてくるのだろうか?
源氏物語の世界は、実は背徳の愛の連続であることもデフォルメされ表現される。
いつの世も同じことであると思った。
そこから生みだされる愛情や生命は等価である。
布の使い方、扇子の使い方、傘や棒の使い方椅子の使い方が
子供のママゴト遊びのようである。
いつも感じる野田秀樹の幼児性。
いや遊戯性と言わなければならないのだろう。
それが多くの観客の心の真ん中を突き刺すのだろうと思った。