立川志の輔の落語を聴いたとき、「中村仲蔵」という噺があった。
これは歌舞伎役者の話である。
中村仲蔵が「忠臣蔵五段目」をやるシーンが印象に残っていた。
今回、久方ぶりに平成中村座が浅草に出るという。
演目を調べたら、「仮名手本忠臣蔵」をやるというではないか?
WEB松竹にてさっそくチケットを検索、
自分のスケジュールが合う日で「五段目」を見たいと思っていたら
上手くチケットを取る事が出来た。
僕の歌舞伎初体験は、実はこの「平成中村座」であった。
2001年11月「義経千本桜」。
熱心な歌舞伎ファンではないので、これで数度目の歌舞伎鑑賞である。
平成中村座は小屋が小さいので近くで役者を見る事ができるのがいい。
2001年の時には墨田河畔だったので言問橋の方に歩いていったのだが
そのような建物などがまったくなく、この辺りの人に聞いてもそんなものはないという。
歌舞伎座に電話をして確認したら、浅草寺の境内の中だと聞いて
あせって移動した。浅草寺の境内は人でごったがえして活気がある。
以前の歌舞伎小屋へ通う風景はこんなんだったのかなあと思い「平成中村座」へ。
「通し狂言・仮名手本忠臣蔵」は全部で11段からなるもののようである。
今回は五段目・六段目・七段目と見たのだが、この三段でも四時間かかる。
通しでこの「仮名手本忠臣蔵」を見ると、二日はかかる計算。
ここで見ていると、本当に落語の「中村仲蔵」が居るような気分になってくる。
歌舞伎のテンポはものすごくゆっくりであるなあと今回また新たに認識した。
ひとつのことを言うだけでもかなりの時間がかかるのである。
台詞を言わず音楽に合わせて見得を切り、カタチを決めて喋り出す。
七五調の喋りにのせた台詞は耳に心地よい。
これは、まるでダンスであり音楽であるんだなあ!と思った。
歌舞伎の面白いところはここにある。
また、当時の着物や小道具が忠実に作られており、
そういったものがまた非常に面白い。
映画で見るよりもリアリティがある。
侍が菅笠をかぶってくるのだが。菅笠とはあんなにも大きいものであったのかと驚いた。
ほんとうに傘の代わりのようであるなあと思った。
そんなところも歌舞伎を楽むポイントではないかと思った。
舞台では「五段目」はまさに落語の
中村仲蔵に出てくるシーンが面白かった。
「六段目」では勘平が切腹するくだりは迫力もあり面白い。
また「七段目」は兄と妹との出会いと会話のシーンがいい。
ここでの大星由良之助がいい。中村橋之助の立ち姿がいい。
まるで昔の歌舞伎役者を描いた浮世絵のようである。