尊敬する人生の先輩であり同時に仕事関係の大先輩でもある
Mさんの祖父の展覧会の案内をいただく。三井記念美術館?
こんな美術館が三越前にあることを初めて知った。
駅の上に位置するそれは三井住友銀行の本店の七階にある。
荘厳な昭和4年に建てられた建築は関東大震災の
経験をもとにちょっとやそっとではびくともしない建築を
ということで当時の平均建築費用の10倍の費用をかけて
建てられたものだそうである。
結局、長く建物が使われているということは
コストパフォーマンスがいいということである。
日本橋三井タワーが真横にあり、そこがこの美術館の入口になっている。
マンダリンオリエンタルホテルのある新しい建物は気持ちがいい。
三井本館のエレベーターもロビーもとっても手入れが行き届いており、
年月を経て手入れされた状態で使い続けられているものが
いかに人間的に気持ちのいいものであるのかということを感じさせる。
老舗割烹や老舗旅館、そして手入れされた古寺などその中に身を置くだけで
感じられるものがあるというのは不思議な気持ちがする。
森川如春庵はその名を森川勘一郎という愛知県一宮の出身。
彼と三井物産の初代社長益田孝(=益田鈍翁・ますだどんのう)は
39歳も歳が離れているのにもかかわらず茶の湯を通じて
交流が行われていた。この展覧会はその交流の記録とも言える。
特に、茶碗本阿弥光悦作の「時雨」や「乙御前」を
10代で所持した如春庵とはいったいどのような人物だったのだろうか?
高校時代、そんなものにはまったく興味がなかった自分を思い出して、
その差に愕然とする。
年上の教養人と付き合うことでますます如春庵は
自分を磨いていったのだろう。
茶の湯の道具と茶室にかける掛け軸、そして花瓶などが展示されている。
一番気に入ったのは、17世紀桃山時代に作られた、
織部の茶入れ「蛙」というもの。
晩年まで如春庵が実際に愛用していたそれはどこか愛嬌があり、可愛らしい器だった。
いま思うと、このようなものを日常で愛用するという行為自体が
崇高なものであり、その意味が、また茶の湯の精神である
「一期一会」を強く認識させるのである。