15分間の休憩をいれて3時間20分!3時間20分!!
3時間20分の舞台!!!
「東急本店の駐車場は22時30分に閉まりますので、
お車を停められている方は、終演後,お急ぎ下さい。」
との張り紙があった。
KERAが以前、コクーンでやった「カメレオンズ・リップ」を
期待して行くと、裏切られたような気になるかも知れない。
KERAは無意味で、わけもなく長い舞台をコクーンでやることに、
面白みを見出した。そういう意味ではパンクである。
舞台は、現在。ねずみ講をやっていると思われる会社と。
近未来。(これもKERA作品に良く出てくるのだが。)
世界が崩壊して、新しい支配階級が労働者を搾取している
社会が交互に描かれ、そして混じり、最後には崩壊する。
すべての論理的な構造や、物語運びの整合性などが、
脈絡なく崩壊していく舞台だった。
これを観て、「何じゃ、こりゃ?」と思った観客も多数いたに、
違いない。
しかし、見方を変えると、下北沢駅前劇場あたりで行なわれている、
小劇団の馬鹿で不条理な破綻演劇と何ら変わりはないのだ。
それをKERAは達者な役者たちを起用して、
観客を集めながら裏切る。
当日は、バルコニー席の後ろのテラスで立ち見席があり、
それも全て埋まっている状況だった。
彼らは3時間以上経ち続けていたことになる。
「のぞみ」なら新大阪を越えて、次は「岡山」かあああ?
みたいなことになっているのだ。
そう「岡山」なのだ。
観客たちは、乾いた笑いを発しながら、
長い舞台と格闘していた。
まるで、異種格闘技だ。
入りやすそうで、いったん入ってしまうと抜けられない。
そんなパラレルワールドに、
いや虎の穴に入り込んでしまった観客たちと、
舞台製作者との異種格闘技なのだ。
入ってしまったら、もう最後まで行くしかない。
まるで「ねずみ講」に入ってしまったかのように。
「シアターコクーン」というリッチなオブラートに包まれた美しい劇場。
キョンキョンと堤真一という豪華なキャスト。
しかし、観客が9000円払って
通常の満足を得ようと思った前提は覆される。
これは、確信犯的な行為なのだ。
ドラマツルギーやカタルシスなどというものは
もはや存在しない。
そうして、舞台は崩壊し、乾いた笑いが舞台を包み
この演劇的な異種格闘技は終わる。
それを、楽しめるかどうかが、
この舞台の評価を決めていくのかも知れない。
松尾スズキの演技が奇妙で印象に残る。