五反田団の強みは自前の劇場を持っていること。
実験的な公演や試みが簡単にできる。
驚くことに今後、12月、1月、2月と続いて前田司郎作・演出の舞台が行われる。
12月と1月の公演もここアトリエヘリコプターである。
前田司郎は青年団のこまばアゴラ劇場で
公演をやり続けそのときに平田オリザの
演劇の運営マネジメントのようなものを学んだのだろうか?
駒場アゴラ劇場(平田オリザの実家を改装して劇場にしたもの。)での実験を、
今、前田は実家を改造したアトリエヘリコプターで独自に行おうとしているのだろうか?
今回の舞台も五反田団らしく。入場料は1500円。
舞台はシンプル。椅子が4脚置かれているのみ。
この4脚の椅子が様々なものに変容する。
まるで野田秀樹の舞台を見ているように
縦横無尽にストーリーは展開していく。
黒田大輔が熱演している。
今回の舞台での黒田はかなり肉体的に大変だろうと思った。
登場人物は4名。黒田大輔の妻の役として安藤聖(あんどう・せい)、
黒田大輔の実の姉として後藤飛鳥。
実の兄の役として前田司郎。
黒田夫婦が父親の介護をしており死を看取るところからこの舞台は始まる。
しかも最期をきちんと看取ったのは義理の妹であり黒田の妻である安藤だった。
実際の家族は介護を押し付け、そのことについては多くは語られない。
唯一、実の姉(後藤飛鳥)が、義理の妹に、
父親の介護を押し付けてしまったみたいでごめんねと謝るシーンがある。
しかし、あやまっていたときには父親は既に他界している。
「おじいさんの箱」という言葉などから物語を類推していく。
多分、棺おけだろうと想像できる。
この舞台では多くのことは説明的に語られない。
観客はその成り行きに身を任す。
まずは自分の家なのか病院なのか?
の椅子に座っている黒田大輔のへんてこな演技からこの舞台は始まる。
この自由さが五反田団の持ち味であり、
今後、さらに自由な世界へ向かっているのだなと思った。
そこに兄と姉が訪ねてくる。
彼らはこの棺おけを海に流してお弔いをするための旅に出る。
少なくとも僕はそう解釈した。
「すてるたび」は「捨てる旅」なのではないかと推測する。
今回の舞台は見るものによって大きく解釈がわかれるかもと思った。
抽象的な表現が舞台上で繰り広げられる。
これはいったい何だろう?
というような観客に想像させるような表現がたくさん出てくるのである。
これが今回の舞台の大きな特徴であり面白さである。
舞台が様々に変容していくので
観客は俳優の動きなどを見ながらシーンを創造していくのである。
最初の場所を出た一行は電車でどこかへ向かっている。
するとそこは「子造神社」という神社だった。
そこで黒田は大きな観音様に襲われる。
そして黒田は神社に空けられた穴に入っていっていく。
そこはしめっていて細くて長い穴。
それを前田は四脚の椅子だけで表現する。
その暗い穴を抜けると
そこは何と旅館の温泉場であった。
そこのお風呂に入っている前田と出会う。
温泉は混浴で姉と黒田の妻である義理の妹もお風呂にやってくる。
旅館での夜、黒田は海底に深く沈んでいく夢のようなものを見る。
ようなものといったのは現実なのか何なのかは語られないからなのである。
そして翌朝。棺おけは海に流されるのだが、
なかなか海の遠くまで流れていかないのである。
それを3枚のタオルだけで表現しているのが素晴らしい。
結局、棺おけに入っていたのは、父親なのか犬のタロなのか
また全く別のものなのかわからないまま舞台は終わる。
ナンセンスさに前田司郎の描く特有の脱力する世界がマッチしており
とっても興味深い舞台になった。