坂井真紀主演。熊切和嘉監督。
熊切監督は「鬼畜大宴会」を作った監督。
この映画はカルト的な人気があるらしい。
坂井真紀の選ぶ仕事はどれも印象に残る。
それは本人のチカラのなせる業なのか、
作ろうとする作品や作家に対する彼女の見識なんだろうか?
とにかく、どれも強い印象を残すことだけは間違いない。
それがコミカルなものであっても、また、シリアスなものであっても。
この映画は埼玉県秩父市寄居町でロケーションが行われている。
ここに離婚して出戻って来た、バツイチ家事手伝の36歳の女が描かれる。
彼女は芸能界でデビューしたのだが仕事がぱっとしないまま、
マネージャー(鶴見辰吾)と結婚した。
しかし、離婚してしまい
寄居町の実家に戻ってくる。
パラサイトな生活がここで続いている。
何の希望も未来も感じずにただこの街で生きている。
生きる希望の微かな光明が見えてくるのか来ないのか、
その微妙な気分を熊切監督は丁寧に掬い取っている。
滋味深い映画である。
骨格は吉田大八監督の「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」に少し似ている。
「腑抜けども」は佐藤江梨子が元女優だった出戻りの女を演じていた。
ノン子36歳の生活をじーっとみていると、少しだけいたたまれなくなる。
この暮らしの中に彼女が生きていく突破口はあるのか?
そこに外部からやってくるものたちが彼女の生活に変化を与える。
一人は元夫のマネージャー。
そしてもう一人は、ここの神社で行われる祭礼のときに
出店をしたいとやってくる若者。(星野源)
ひょんなことから彼とノン子との交流が始まる。
それはお互いに未来への希望をもてなくなったもの同士が、
どうにかして生きていこうとするような、
お互いの傷口を舐めあうような関係といったらいいのだろうか?
その関係を見ているとますますいたたまれなくなる。
そうして、祭礼の日に事件が起きる。
いままでのことが崩壊するようなことが。
こうやって、一瞬にして築き上げたものが崩壊していくんだなあと思った。
坂井真紀もこの日自分の中の希望が崩壊していく。
ゼロになった二人はいったいどうなるんだろう?と思った。
坂井真紀の体当たりの演技がこの映画にリアリティを与える。
ヒヨコはニワトリになるのだ。
生きていくとはそういうことだと教えてくれる。
この映画は、明日から銀座シネパトス他にて公開される。