最近、ソーシャルデザインという言葉を聞くようになった。
社会へ向けてデザインを通じて何が出来るのか?を問うもの。
今回の展示会でも、「食」を通じて本当に幸せなことというのは何なのか?
ということを考える機会になっていた。
その根本にある考え方が
「低レベル安定社会へのデザイン」という言葉である。
高度経済成長という神話は崩壊し、
極端なほどの逆風が吹き荒れているかに見え、
マスコミはその危機意識を煽る。
それにのせられた国民は閉塞感を強くし、自らの中に篭ろうとする。
しかしながら、よく考えてみたい、
実は高度経済成長の時代と比べて現在の生活の方がより快適で、
食べることに困ったりしていないのではないだろうか?
食材の流通や保存が進み、以前よりも新鮮で美味しいものが
安く食べられるようになった。
右肩上がりの成長と言うものはもはや望めないだろうし、
それを積極的に望むことも意味がなくなってきた時代となった。
その中で、我々は本当に大切なものを見つけだし、考え、
みなと共有することがこれからの社会の一員として
重要なことなのではないかと思う。
そこに、この言葉である。
本当に豊かで安定した社会に向けて
デザインが、パッケージがなしえることは確かにある。
と、この展示会を見て思った。
鹿目尚志氏の総合プロデュース。
そして今回の総合ディレクションとして
中島信也がその役を果たすことになった。
中島さんは、このテーマを決め
そして、そのお題として架空の中島農園でとれた
無農薬玄米のネーミングとパッケージデザインとした。
中島さんを中心とした十人の仲間たちは
日本橋の居酒屋「赤垣」にて気炎を上げながら未来について語った。
その時の結果がこの展示会場にある。
場所は表参道スパイラルビルの裏にあたるマンションの1階。
ここにギャラリー5610がある。
エントランスに掲げられた中島さんの筆書き文字
「パッケージ幸福論」という看板が目印。
プロの手になるものを見ると、無農薬玄米の持つ本質が見えてくるのが面白い。
彼らは無農薬玄米の要素を
因数分解でもするように解体してその要素を再構築していく。
ああ、こうやってデザインが出来上がるんだという
思考のプロセスみたいなものが浮かび上がってくる。
それは広告コピーを書くのと同じではないかと思う。
と同時に、デザインをするというのも方法が違えども考えることは
同じなんだなと確信できる瞬間でもあった。
アウトプットの表現スタイルが違うだけである。
これを映像作品にするということも
実は同じ思考のプロセス抜きには出来ないことなんだろうと思った。
ここには我々の仕事がなしえる未来への提言がある。
それをいち早く発見し、実行していく勇気が
僕たちに求められているのかもしれない。
帰りの表参道の駅に大きなポスターが貼ってあった。
デザインが何か社会のために出来ないか?
佐野研二郎氏や森本千絵氏の作品が掲載されていた。ここにも。