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1、「黙阿弥オペラ」こまつ座・ホリプロ(@紀伊国屋サザンシアター) 2、「F/T 10」(@にしすがも創造舎、他 豊島区内の劇場など) 3、「演劇入門」本広企画+青年団リンク(@こまばアゴラ劇場) 4、「葬送の教室」風琴工房(@ザ・スズナリ) 5、「プランクトンの踊り場」イキウメ(@赤坂REDシアター) 6、「武蔵小金井四谷怪談」ハイバイ(@こまばアゴラ劇場) 7、「スイング・バイ」柴幸男(@こまばアゴラ劇場) 8、「ロボット版・森の奥」 平田オリザ+石黒浩研究室(大阪大学)(@愛知県芸術文化センター小ホール) 9、「広島に原爆を落とす日」つかこうへい(@シアターコクーン) 10、「微笑みの壁」城山羊の会(@ザ・スズナリ) 11、「ハーパー・リーガン」(@パルコ劇場)他、長塚圭史演出作品 12、「日本人のへそ」テアトル・エコー(@恵比寿エコー劇場) 13、「女の罪」ブス会(@リトルモア地下) 14、「裏切りの街」三浦大輔作・演出(@パルコ劇場) 15、「世界の秘密と田中」「YMO―やっともてたオジサン」ラッパ屋作品(@紀伊国屋ホール) ○番外 「F/T 10 シンポジウム」(@あうるスポット) 「黙阿弥オペラ」 今年の4月9日に井上ひさしさんが亡くなりました。 僕にとってこのことが、今年、一番の演劇界のトピックスでした。 井上さんが生きていたころ、 僕は決して熱心な井上ひさしファンではありませんでした。 でも、亡くなって追悼番組や追悼公演を見聞きするたびに この演劇界の巨人のすごさを実感し再認識したのでした。 新国立劇場の三部作は結局一度も見ることが出来ませんでした。 キャンセル待ちですら入れないというような状況でした。 でも、そこに行くことで井上ひさしさんへ メッセージを書いて投函することが出来ました。 来年は山形の井上ひさし記念館に是非行きたいと思っています。 この「黙阿弥オペラ」も当日抽選で2名が見ることが出来る ということで並びました。 何と10人に一人の確率で見ることが出来た作品です。 劇作家としての創作の苦しみが 井上ひさし本人と重なって仕方がありませんでした。 井上ひさしが、戯曲(文章)を書くにあたっての 言葉は忘れることが出来ないものとなりました。 「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、 ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに、 まじめなことをゆかいに、そしてゆかいなことはあくまでゆかいに」 「F/T 10」 今年の秋に1カ月かけて行われた東京と豊島区が中心となった 演劇フェスティバルです。舞台芸術のフリーペーパーで自ら特集したこともあって、 5回券などを買って熱心に通いました。 印象的な作品がいくつもありました。 飴屋法水の「わたしのすがた」、 ロジェ・ベルナットの「パブリック・ドメイン」、 黒田育世の「あかりのともるかがみのくず」、 相模友士郎の「ドラマソロジー」、 そして8時間の体験を共有した ウェン・ホイ振付、ウー・ウェングアンが ドラマツルグと映像を担当した「メモリー」、 そして、池袋しか行けませんでしたが 高山明の「完全避難マニュアル 東京版」などなど。 事務局はもう来年に向けて活動を開始しています。 「演劇入門」 ひょんなことから稽古場見学をさせていただくことになり、 創作の過程を見ることが出来たという意味でも印象深い作品となりました。 舞台とは毎回、変化するものであり一期一会なのだということが 身体感覚で伝わってきました。 本広克行監督の人がらでしょうか? とても温かい現場の経験が出来ました。 本公演は、また再演されるといいなと思います。 岩井秀人の戯曲に本広監督の演出、青年団の俳優の幸福な出会いが 結実した形となりました。 終盤は見ることが出来ない人が出るほどの盛況となりました。 「葬送の教室」 本広監督に勧められて見に行きました。 JAL123便の御巣鷹山の事件のことについて扱った作品でした。 遺族の方と航空会社との軋轢はあるものの、 二度とこうした事故を繰り返さないために 冷静に客観的にものごとを見つめていく知性が 新たな一歩を踏み出せるということを教えてくれました。 パラドックス定数の「蛇と天秤」も ドキュメント的なテイストを持つ優れた舞台でした。 「プランクトンの踊り場」 とにかく前川知大の戯曲は素晴らしい。 知的刺激に満ちた舞台をコンスタントに書ける能力に嫉妬を覚えます。 脳と意識の問題などがこの舞台から浮き上がって来ます。 「武蔵小金井四谷怪談」 ハイバイの岩井秀人の戯曲も素晴らしいです。 しかし、それだけではありません。 奇妙なキャラクターを作るという意味では本当にオリジナリティの強い作家です。 猪股俊明演じる、お父さんの歩き方は 生涯忘れることの出来ないものとなりました。 「スイング・バイ」 青年団関係の舞台が続きます。 柴幸男は若手演出家の中でも抜きんでています。 しかもまだ20歳代と聞いて驚きました。 あいちトリエンナーレでの「あゆみ」の評判もとても良かったと聞きましたが、 この「スイング・バイ」も秀作! 俳優の身体と長時間向き合ったから出来たものが 観客に提示されます。 そういう意味では演劇とはものすごく効率の悪い 創作活動であると言えます。 それだからこそ貴重であるということも同時に言えるのです。 「ロボット版・森の奥」 青年団主宰の平田オリザが大阪大学のロボット学の先生と 共同して作った舞台。 世界初演として第1回あいちトリエンナーレで上演されました。 人間はロボットに愛情を感じることが出来るという 具体的な事例となりました。 「好奇心」がサル(類人猿)をヒトに変えていった という平田さんの言葉が忘れられません。 「広島に原爆を落とす日」 今年は、井上ひさしさんに続いて、 つかこうへいさんが亡くなった年でもありました。 7月10日のことでした。 その1ヶ月後の広島に原爆が投下された8月6日に、この公演が始まりました。 アンコールのカーテンコールが終わった後も、 誰もいない舞台の真中にスポットライトがあてられていました。 つかさんがまるでそこにいるかのようで、 いつまでも観客の拍手が鳴りやみませんでした。 演出=岡村俊一 (監修=杉田成道) 「微笑みの壁」 山内ケンジの新たな一歩となるような作品でした。 これからさらに新たな俳優のキャスティングなどで、 新しい試みを見せて欲しいと願っています。 ハイバイの金子岳憲の印象が強く残っています。 奇妙で笑える舞台でした。 「ハーパー・リーガン」 長塚圭史はロンドンから戻って来て 演出家として素晴らしい成長をしていると感じています。 面白い戯曲を選んで、新しいと感じられる演出をやり続けるのは 並大抵じゃないでしょう。 本作とともに「アンチクロックワイズ・ワンダーランド」も優れた舞台でした。 同じく、長塚演出の「タンゴ」を見に行けなかったのが悔やまれます。 「日本人のへそ」 テアトル・エコーに井上ひさしが初めて書き下ろした演劇作品です。 井上ひさしへの追悼公演でした。 「ひょっこりひょうたん島」のトラヒゲの声で有名な熊倉一雄が 83歳で出演していました。 当時としては画期的で斬新な作品だったと思われます。 学生時代に、井上ひさしが働いていたストリップ小屋 「フランス座」の経験が生かされているものとなっています。 「女の罪」 ペヤング・マキと称した溝口真希子が作・演出した作品。 女同士の関係がリアリティを持って伝わってきます。 男の前で見せる女とはまったく違う女の生な姿が描かれています。 女性を一概にくくれないというのもリアルでした。 安藤聖のカラオケの上手さにびっくりしました! 「裏切りの街」 ぺヤング・マキとポツドールを一緒に旗揚げした主宰、 三浦大輔の舞台。 独特のダルな感覚で現代の東京を活写します。 秋山奈津子と田中圭が出会い系で知り合って 関係を持つようになるまでのくだりが心の虚無感とともに上手く描かれています。 今年は三浦大輔監督の映画「ボーイズ・オン・ザ・ラン」も公開されました。 「世界の秘密と田中」&「YMO―やっともてたオジサン」 はラッパ屋主宰、鈴木聡さんの渾身の二作となりました。 中年のサラリーマンという最も劇場に足を運ばないだろう人が 主人公のラッパ屋の演劇は、中年のサラリーマン必見の舞台です。 年を取ることによって哀愁が漂いながらも 懸命に生きていこうというメッセージがしっかりと伝わって来て 元気な気持ちになれるのです。 「YMO―やっともてたオジサン」は。 56歳中小企業部長で富士そばとドトールを こよなく愛する髪の毛の薄い男が主人公です。 彼が同じ会社の41歳の派遣の女性と恋に落ちるのです。 番外として「F/T 10 シンポジウム」です。 F/T 10公演期間中にあうるスポットで4回にわたって行われました。 F/T 10で目指している演劇の枠から 逸脱しそうな演劇について都市そのものが持っている 意味も含めながら様々な角度で議論されたものとなりました。建築家の隈研吾さんが印象に残っています。また、このシンポジウムはWEB(シアター・テレビジョン)にて公開されています。 ●その他 1、「文化庁メディア芸術祭」(@国立新美術館) 2月に国立新美術館で受賞作品が展示されました。 国がエンタメ文化を世界に発信していけるようにと こうした試みが長く続いていることはとても嬉しいことです。 ここから若い才能がどんどんと出てきて 新たな表現が獲得出来る場になっていけばいいと思っています。 昨年のエンターテインメント部門の大賞、「日々の音色」 (作者:ナカムラ マギコ / 中村将良 / 川村真司 / Hal KIRKLAND) の受賞は本当に嬉しいものでした。 さて、来年もどうぞヨロシクお願い致します。 そして、みなさまにおかれましては、良い年をお迎えください。 ▲
by haruharuyama
| 2010-12-30 05:50
| 舞台
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1、「告白」2010年 日本(@TOHOシネマズ日劇) 2、「アウトレイジ」2010年 日本(@新宿バルト9) 3、「母なる証明」2009年 韓国(@シネマ―ト六本木) 4、「どですかでん」「デルス・ウザーラ」1970年代黒澤明作品(@国立フィルムセンター) 5、「ソフィアの夜明け」2009年 ブルガリア(@イメージフォーラム) 6、「しかし、それだけではない」2009年 日本(@渋谷シネマアンジェリカ) 7、「ハーブ&ドロシー」2009年 米国(@イメージフォーラム) 8、「PEACE」2010年 米国(@有楽町朝日ホール) 9、「特集上映 マノエル・ド・オリヴェイラ102歳」ポルトガル他(@ユーロスペース) 10、「アバター」2009年 米国(@川崎TOHOシネマズ) 先日、プロデューサーのSさんと話をしていて、 映画を年間250本見ると聞いて驚きました。 それを積み重ねることによって 10年間で2500本というストックはまさに圧巻です。 また、広告会社のCDのIさんなどは、 「最低年間300本見る!」というのを聞いて、ひれ伏しました。 数少ない鑑賞本数からのベストなので、 見当はずれのものがあるかと思います。 また、マイナーなものやドキュメンタリー作品も 個人的な好みで多くなっています? その偏重したセレクトをお許しください。 とはいえ、「告白」です。 「告白」は大ヒットしました。 湊かなえの原作本も相乗効果で売れました。 レディオヘッドのプロモーションビデオを見ているかのような、 密度の濃い映像とサウンドデザインにやられました。 その表現技術と寄り添うように、恐ろしいストーリーが 同時並行で語られ戦慄しました。 松たか子さんのクールさが あの映像ととてもマッチしていました。 ダンサーの黒田育世が俳優として起用され嬉しく思いました。 「アウトレイジ」。北野武監督が描く組織と個人の話。 生き残るための壮絶な戦いが 現在の日本社会の状況を活写しているようでした。 ある意味、現実社会のアンチテーゼとして見ることが出来ました。 暴力シーンの過激さばかりが話題になりましたが、 本質的な怖さは人が人を裏切るところに あるのだとこの映画は語っていました。 「母なる証明」息子を守るために母親がしてしまったことは、 犯罪なのか愛情なのか? マイケル・サンデル教授の授業「ハーバード白熱教室」で 取り上げたいくらいの難しい問題です。 倫理観をえぐるような作品が頻繁に作られるのが 韓国映画の特徴のひとつじゃないかと思います。 何故、日本映画でそれが出来なかったのでしょう? 演劇ではとっくに行われています。 ある映画評論家が朝日新聞に以下のような内容のことを書いていました。 テレビ局が関与せずに行った映画「告白」や「悪人」がヒットしたのは、 映画でしか出来ないことがある、ということなのでしょうか? 「どですかでん」「デルス・ウザーラ」 今年は、黒澤明監督生誕100周年でした。 フィルムセンターへ未見のものだけに絞って、行きました。 大スクリーンのフィルム上映だから見えてくることもあるのだと思いました。 「どですかでん」は心あたたまる人々を描いた秀作。 「デルス・ウザーラ」は神聖な気持ちになる物語でした。 イノチを巡るシベリアの壮絶さと温かさが同時に描かれており、 やはり黒澤明は凄い!と思いを新たにしました。 1970年代の黒澤明作品は興行成績とは逆に、 とても貴重な2本のフィルムをわたしたちに残してくれたのだと思いました。 「ソフィアの夜明け」は映画が年間数本しか作られない ブルガリアの作品。昨年の東京 国際映画祭のグランプリ作品です。 国際映画祭で受賞しても必ずしも公開配給に結び付かないというのは、 どういうことでしょう? こうしたマイナーだけど映画はメジャーであるものを きちんと配給出来ることが重要だと思うのです。 そうい意味でもイメージフォーラム見たいな 独立系映画館の方々に対して何らかの支援をすることが重要かと思われるのです。 「しかし、それだけではない」は 加藤周一のドキュメンタリーです。 上映していた映画館のシネマ・アンジェリカは今年、閉館となりました。 恵比寿ガーデンシネマの閉館(2011年1月予定)とともに残念な話となりました。 この映画はスタジオジブリが支援・配給をしています。 宮崎さんや高畑さん、鈴木さんが このような映画に日を当ててくれることはとても有難いことです。 スタジオジブリが出しているDVDで「人間は何を食べてきたか」なども、 ジブリが発売したということがジブリのCSR活動につながっているように思うのです。 加藤周一が東大の講義で語っていた 「60歳代以上と君たち学生が共同すれば社会を変えていける!」 という発言が印象的でした。 社会人にとって耳の痛い話です。 「ハーブ&ドロシー」は配給公開がなかなか決まらず、 ようやく決まったところで「さとなお」さんを初めとする ヴォランティアの広報部隊がソーシャルメディアを駆使して 宣伝活動をしたおかげで連日満員となる盛況となりました。 イメージフォーラム開館以来の入場者数だと聞いて、 ソーシャルメディアの影響力の実際をまのあたりにしました。 「PEACE」は東京フィルメックス映画祭で特別上映されました。 敬愛する観察映画監督、想田和弘の作品です。 岡山の想田さんの妻の実家のお父さんとお母さんをおっかけたもの。 介護の現場の最前線がこの映像から見えてきます。 彼は何物からも自由であるために市販のビデオカメラを持って 一人で取材を続けます。 資金を出す人がいないことで自由に映像を作れるという 環境を想田さんは選択しています。 それは市販のビデオカメラを一人でかついで撮影して 編集するというスタイルです。 次回作の青年団を追った「演劇」という作品が楽しみです。 「特集上映 マノエル・ド・オリヴェイラ102歳」は 今年の4月にユーロスペースで特集上映が行われました。 そこで観たのは三本。 未見だった「わが幼少時代のポルト」と再見の「家路」と「家宝」。 彼の持っている独特のスノッブな感覚が 映画の独自性を引き出します。 年をとってから精力的に映画を撮り続けている姿勢は 本当に頭の下がる思いです。 100歳を超えても次回作の準備をしていると聞きました。 「アバター」 この極私的ベスト、唯一のアメリカ映画のメジャー大作です。 この映画によって映画館での3D上映というシステムが完全に普及しました。 ストーリーどうこうと言う前にその社会的な現象を作り上げてしまう、 ジェームズキャメロンという偏屈物がいるという事実を評価したいです。 彼個人の存在抜きにはこうした映画は、作られなかったのでは という意味でも意義のある作品だったと言えると思います。 ▲
by haruharuyama
| 2010-12-30 05:34
| 映画
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1、「奇蹟の画家」後藤正治(@講談社) 2、「ドキュメンタリー映画の地平」上・下 佐藤真 (@大田出版) 3、「ドキュメンタリー映画は語る」 山形国際ドキュメンタリー映画祭「Documentary Box」編集部 編(@未来社) 4、「戦後世界経済史」猪木武徳(@中公新書) 5、「経済成長という病」平川克美(@講談社現代新書) 6、「日本辺境論」内田樹(@新潮新書) 7、「井上ひさしの農業講座」井上ひさし・こまつ座(@家の光協会) 8、「演出家の仕事」栗山民也(@岩波新書) 9、「ええ音やないか」橋本文雄・上野昂司(@リトル・モア) 10、「テレビ快男児」藤田潔(@プレジデント社) 番外:次世代の広告を見据えた様々な書籍。 「Twitter社会論」津田大介(@洋泉社) 「欲しい、ほしい、ホシイ」小霜和也(@インプレス) 「U-Stream世界を変えるネット生中継」川井 拓也(@ソフトバンク新書) 「次世代広告進化論」須田和博(@ソフトバンク新書) 「キズナのマーケティング」池田紀行(@アスキー新書) 今年、挙げている書籍で特徴的なのが 「小説」と呼ばれるものが全くないことです。 村上春樹の「1Q84」 本棚に並んでいます。 「考える人」の村上春樹インタビューはそれを読んでからです。 お正月にゆっくり読みたいと思っています。 「奇蹟の画家」は、今年の1月17日。 阪神淡路大震災の起きた日に放送された 「情熱大陸」を見たのがきっかけでした。 石井一男という神戸在住の画家のドキュメンタリーでした。 彼の生活の様子がとても衝撃的で こうして天使のように絵を書きつづけている人がいるという事実に驚きました。 清貧とは、まさにこうした生き方のことを言うのだと思い、 自分自身がそれを出来るか?ということを問われました。 その衝撃が本書を読ませるきっかけになりました。 後藤正治の丁寧な取材によって、 神戸元町の海文堂書店の主人とのかかわりのことや、 石井さんの心の軌跡なども良く分かり、 さらに石井一男という人が理解できたような気がしました。 この「情熱大陸」を制作した スローハンドという制作会社のものはいつも面白いです。 伊豆田知子さんというプロデューサーはどんな方なんでしょう? 「ドキュメンタリー映画の地平」上・下 佐藤真 「ドキュメンタリー映画は語る」 山形国際ドキュメンタリー映画祭「Documentary Box」編集部 編 と二冊ドキュメンタリー関係の本が続きます。 会社であるテーマを研究して発表するという 学校のようなことをやっています。 仕事に関係しそうなものならテーマは自由です。 そこで今年は「ドキュメンタリーとは何なのか?」 というタイトルで発表をしました。 特別ゲストで東北新社のディレクター 坂部康二さん(「NARA:奈良美智との旅の記録」を作った監督 「情熱大陸」なども手掛ける。)にもゲストで来て頂きました。 佐藤真の著書は佐藤さんの考えるドキュメンタリーについて 歴史的な視点も含めて語られています。 佐藤さんは49歳でうつ病になり自殺しました。 ドキュメンタリーとは何であるか?という答えなぞ、 簡単には出ないということが様々な文献を読むとわかります。 「ドキュメンタリー映画は語る」は、 たくさんのドキュメンタリーにかかわっている 監督やスタッフにインタビューしたものです。 面白かったのが録音の方のお話。 ドキュメンタリーはずーっと録音し続けなければならないという言葉から、 劇映画での橋本文雄の録音とは真逆の方向で取り組む ということがわかりました。 録音機のフェーダーを下げないということが 瞬間を記録するということなのでしょう。 「戦後世界経済史」猪木武徳(@中公新書) 「経済成長という病」平川克美(@講談社現代新書) 「日本辺境論」内田樹(@新潮新書) 上記の三冊も微妙につながっています。 日本とは日本経済とは日本の戦後とは日本らしさとは? ということがそれぞれの観点で語られています。 「戦後世界経済史」は中山さんのブログ「デジタルノート」の文章を読んで 面白そうと思って購入しました。 戦後の経済がどのように変化していったのかが わかりやすく語られています。 わかりやすいのですいすいと頭に入ってきます。 人間の欲望について、今年はいろいろと考えました。 欲望が経済を発展させるのも事実です。 あとがきの一部を引用します。 経済的な豊かさの源泉は、 自然資源を十分保有しているか否かではなく、 その国がいかなる人的な資源を育て上げ、 いかなる制度を整えたかによる。 (中略) 日本のような経済の先進国でも、 市民文化や国民の教育内容が劣化してゆけば、 経済のパフォーマンス自体も 瞬く間に貧弱になる危険性を示唆していることになる。 知育・徳育を中心とした教育問題こそが これからの世界経済の 最大の課題であることは否定すべくもない。 「経済成長と言う病」(2009年初版)は、 内田樹の小学校の同級生である平川克美の著書。 今年出版された彼の著書「移行的混乱」(@筑摩書房)を 購入したのをきっかけに、彼の過去の著作を読んでみようと、 図書館で借りたものです。 右肩上がりの経済の限界を知ってしまったいま、 わたしたちはどのようにすればいいのか? ということをいち早く見抜いていたことに、驚きました。 「ビジネスに『戦略』なんていらない」2008年(@洋泉社)も、 優れた著作であり平川の想いが全てこの1冊に詰まっている処女作品です。 その友人であり、2011年3月で神戸女学院の教授を退官される 予定の内田樹のベストセラーが「日本辺境論」。 彼の他の著書と比べて、内容にそう大差はないのですが、 こうしたタイトルと売り方でベストセラーが生まれるのだな、 と感心しました。 本書を読むと日本のアダプテーション文化の素晴らしさがわかります。 「ひれふし咀嚼しやがて自分のものにしていく。」 これを海外に向けて発信していくにはどのようにすればいいのか? が今後の課題となるのでしょうか? 「井上ひさしの『農業講座』」は 生前の井上さんがどのように世界や農業や食糧自給について 考えていたかが良くわかります。 こうした公開講座がバブル全盛のころに始まっていたという事実に感動しました。 「演出家の仕事」は 井上ひさしの舞台を一番多く演出してきた人の著書だから読みました。 栗山民也も「情熱大陸」で取り上げられていました。 「ええ音やないか」は劇映画の録音技師として 最も有名な方の一人、橋本文雄さんに上野 昂志が 何度もインタビューして半生記としたもの。 ある戦前生まれの職人さんの半生記としても面白いです。 軽やかに転身していく姿に、環境に応じて 適応していくことの素晴らしさを教えてくれます。 「テレビ快男児」はビデオプロモーションという 独特のポジションを持つ広告会社が どのようにして生まれ育っていったのかを 創業者が自らの半生とともに語ります。 文化的で知的な情報教養番組と広告主をつなぐ 戦略のユニークさが良くわかるものでした。 また、今年も広告業界の変革期、 というか戦後資本主義社会の大きな変革期に差しかかって来ています。 そんな中でどのように仕事を展開していくか 新たなメディアと付き合っていくかに 広告クリエーター初め様々なマスコミ関係の人が直面しています。 その、何らかの助けになるべく、明日のメディア業界を語った これらの書籍の言葉をかみしめました。 業界の未来を見据えて変えて行こうと 多くの志ある人たちが現れてきています。 優秀な人材が多い業界なので また新たな楽しいアイデアが生まれてくることでしょう。 また雑誌「広告」の今年の変化は注目すべきものだったと思います。 新たな広告の高みを求めている姿が、清々しく思えました。 ▲
by haruharuyama
| 2010-12-30 05:24
| 読書
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もう今年もあと数日を残すのみとなりました。 みなさまにおかれましては、どのようにお過ごしでしょうか? 今年もまた、極私的ベストです。 いろいろなご意見があるかと思いますが、 あくまで極私的なものでございます。 どうか御笑覧、頂ければ幸いです。 ●書籍 1、「奇蹟の画家」後藤正治(@講談社) 2、「ドキュメンタリー映画の地平」上・下 佐藤真 (@大田出版) 3、「ドキュメンタリー映画は語る」 山形国際ドキュメンタリー映画祭「Documentary Box」編集部 編(@未来社) 4、「戦後世界経済史」猪木武徳(@中公新書) 5、「経済成長という病」平川克美(@講談社現代新書) 6、「日本辺境論」内田樹(@新潮新書) 7、「井上ひさしの農業講座」井上ひさし・こまつ座(@家の光協会) 8、「演出家の仕事」栗山民也(@岩波新書) 9、「ええ音やないか」橋本文雄・上野昂司(@リトル・モア) 10、「テレビ快男児」藤田潔(@プレジデント社) 番外:次世代の広告を見据えた様々な書籍。 「Twitter社会論」津田大介(@洋泉社) 「欲しい、ほしい、ホシイ」小霜和也(@インプレス) 「U-Stream世界を変えるネット生中継」川井 拓也(@ソフトバンク新書) 「次世代広告進化論」須田和博(@ソフトバンク新書) 「キズナのマーケティング」池田紀行(@アスキー新書) ●映画 1、「告白」2010年 日本(@TOHOシネマズ日劇) 2、「アウトレイジ」2010年 日本(@新宿バルト9) 3、「母なる証明」2009年 韓国(@シネマ―ト六本木) 4、「どですかでん」「デルス・ウザーラ」1970年代黒澤明作品(@国立フィルムセンター) 5、「ソフィアの夜明け」2009年 ブルガリア(@イメージフォーラム) 6、「しかし、それだけではない」2009年 日本(@渋谷シネマアンジェリカ) 7、「ハーブ&ドロシー」2009年 米国(@イメージフォーラム) 8、「PEACE」2010年 米国(@有楽町朝日ホール) 9、「特集上映 マノエル・ド・オリヴェイラ102歳」ポルトガル他(@ユーロスペース) 10、「アバター」2009年 米国(@川崎TOHOシネマズ) ●舞台芸術 1、「黙阿弥オペラ」こまつ座・ホリプロ(@紀伊国屋サザンシアター) 2、「F/T 10」(@にしすがも創造舎、他 豊島区内の劇場など) 3、「演劇入門」本広企画+青年団リンク(@こまばアゴラ劇場) 4、「葬送の教室」風琴工房(@ザ・スズナリ) 5、「プランクトンの踊り場」イキウメ(@赤坂REDシアター) 6、「武蔵小金井四谷怪談」ハイバイ(@こまばアゴラ劇場) 7、「スイング・バイ」柴幸男(@こまばアゴラ劇場) 8、「ロボット版・森の奥」 平田オリザ+石黒浩研究室(大阪大学)(@愛知県芸術文化センター小ホール) 9、「広島に原爆を落とす日」つかこうへい(@シアターコクーン) 10、「微笑みの壁」城山羊の会(@ザ・スズナリ) 11、「ハーパー・リーガン」(@パルコ劇場)他、長塚圭史演出作品 12、「日本人のへそ」テアトル・エコー(@恵比寿エコー劇場) 13、「女の罪」ブス会(@リトルモア地下) 14、「裏切りの街」三浦大輔作・演出(@パルコ劇場) 15、「世界の秘密と田中」「YMO―やっともてたオジサン」ラッパ屋作品(@紀伊国屋ホール) ○番外 「F/T 10 シンポジウム」(@あうるスポット) ●その他 1、「文化庁メディア芸術祭」(@国立新美術館) ◎2010年のこと。 2010年は、「新しい公共」という言葉が、 少しずつではありますが、現実化しつつあることを 垣間見ることが出来た年でした。 今年、1月29日の鳩山首相の施政方針演説で この言葉が取り上げられました。 しかし、その鳩山首相も6月2日に辞任を表明し、 小沢一郎とともに前線を離脱。 管直人首相に引き継がれました。 来年4月の統一地方選で政局はどうなるのでしょうか? 様々な政策立案が、社会を変化させていくことが、 リアル化しています。 不安定な政権下だと、その変化がどうなっていくのかが わからないという不安を感じます。 「高速道路の通行料は、いったい幾らやねん!」 みたいな? また、今年もアップルが様々な挑戦を発表してくれました。 5月末のi-padの発売。 そして、6月末にはi-phone 4が発売されました。 自分もi-phone 4を7月末に入手し、それからtwitterを見る機会が増えました。 様々なアプリがすぐにダウンロード出来、自由に使える。 そしてスマートフォンにはPCと同じかそれ以上の機能が満載されており、 いじっているだけで時間がどんどんと過ぎていきます。 電車の中で新聞を読むのと同時に、携帯電話でメール そしてi-phoneではtwitterという二丁拳銃いや三刀流? のような生活となってしまっています。 この大量な情報をどうすればいいのか? ということが、今後ますます重要になってくるかと思われます。 その時に重要なのは、情報に惑わされずに 自分の考え方や価値観をしっかり持つことだと思います。 では、揺るがない考え方や価値観を持つにはどうするのか? ということになりますが、結局のところ、 たくさんの人に話を聞き、読み、経験し、最後に自分で考えて、 考えたことを自らの言葉で再構築し、 他人にそのことをきちんと伝えることやり続けることによって、 出来あがってくるのではないでしょうか? 雑誌などはデジタルコンテンツ(電子書籍)に置き換わっていくのでしょう。 でもそこに書かれてある「ことば」は普遍です。 仕組みが変わっても変わらないものがあります。 それを根源的に大切にしつつ、 環境の変化に応じて方法論を変えていくということなのでしょう。 みなさまは、どんな1年でしたか? また、来年もよろしくお願い致します。そして、良いお年をお迎えください。 各ジャンルの詳細は明日まとめてアップします。 PS:環境系情報ドキュメンタリー番組を作りました。 BS12チャンネル(TWELLV) 1月15日(土)夜7時から7時30分。(毎週放送) まずは、6月まで放送。 タイトルは がんばれNPO「熱血地球人」というものです。 ▲
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| 2010-12-29 08:59
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「服従するは我にあり」という副題がついている。 今回は原作、千葉雅子、脚色・演出、福原充則という布陣で新たな挑戦をした。 結果、この試みは成功している。 特に俳優としての千葉雅子が際立つ。 彼女が作・演出している時には、 自分自身まで気持ちが行かず、 自らのことを客観視出来なかったのかもしれない。 それも、これだけ個性的な俳優の面々が揃っている 「猫のホテル」だからこその贅沢な悩みなのかもしれないが。 猫のホテルの全俳優が揃ったオールスター公演だっただけに 見ごたえのある2時間少々となった。 昭和の高度経済背長時代に土方から身を興して 土建屋の社長になり政界に進出していく男の話である。 彼の地元は新潟であり。お屋敷を目白に構えると言えば、 そりゃ田中角栄のことだろう!と思わせるような舞台だった。 そこにヴァイオレンスが挿入される。 男は中村まことが演じる。妻に先立たれた男は愛人を囲う。 当時、現役の高校教師だった女(佐藤真弓)。 中村まことの娘を菅原永二が演じる。 菅原は田中真紀子のことだな、と思いながら見ていた。 役人や政治家への賄賂が横行する建設業界で働く健気な千葉雅子。 彼女の正義感が自滅を招く。 正しいことが生き残る道ではないことが良く分かる。 千葉雅子は金銭を渡す役をいいつけられるが その行為自身に悩み自殺する。 と同時に、双子の妹が登場する。 彼女は中村まことの議員秘書になり復讐の機会を狙う。 千葉の得意なおどろおどろした情念の強い世界を、 ぐいぐいとひっぱっていく演出で福原が見せてくれる。 このコンビネーションが結果うまくいっているのだ。 本水の使用、おびただしい量の紙吹雪、 そして真っ赤な幕の使用などなど演出の上手さが 千葉の原作をどんどんと引き立てている。 いまの時代にちょっとないようなスタイルの舞台である。 同じく千葉雅子が出ている 「流れ姉妹」とともにこうした独自のスタイルの演劇があっていい。 70年代の東映の映画のような、激しくも懐かしい感じは 千葉の年齢によって実現出来るものでもある。 最後、急激に話が破綻していく様も見ていて面白い。 これを破綻せずに完璧に作り上げていたら 映画の「天国と地獄」や、 また副題にあるような「復讐するは我にあり」のような作品 みたくなっていったのだろうか? 遊んでいいのが演劇で、余り遊ぶと大変なことになるのが 映画というものなのだろうか? 今年を締めくくる派手でばかばかしい舞台を見せていただきました。 ▲
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| 2010-12-28 07:46
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今年は、黒澤明生誕100年。 国立近代美術館フィルムセンターで特集上映が行われている。 過去に何度も上映されているからだろうか? 劇場は、休日だったが、8割くらいの入り。 「どですかでん」は黒澤作品のなかでもまだちゃんと見ていなかった作品。 「トラトラトラ」の降板事件などがあり、 精神的にも厳しい時代に作られた作品。 黒澤明の1970年代の作品は本作と「デルス・ウザーラ」のみ。 しかし、この2作が世間の評価とは違い傑作である。 単純に人間を描くことから 人間の深みを描くことに力点が置かれているように思った。 ただし本作にはスペクタクルシーンなどはない。 強いていうならば「生きる」の志村喬が見た、 精神世界みたいなものが描かれている? 死を前にしたものが感じる 生きとし生けるすべてのものに対しての愛情が込められた映画。 どこかわからない場所の最下層の部落が描かれている。 ゴミや廃材を再構築して作られたようなバラックの建物がいくつもつくられ、 この部落の巨大なオープンセットが出来あがっていた。 江戸川区の南葛西がそのオープンセットのロケ地だと聞いて驚いた。 40年ほど前は東西線の界隈はあんな感じだったのだろうか? 東西線のさらに先の「妙典」に住んでいるものとしては 毎日通過する葛西のことを思い感慨深いものがあった。 最下層と思われる人々はそれぞれが欠落したものを抱えている。 知恵遅れの「どですかでん」といいながら架空の電車を毎日走らせる男。 その母親は毎日神にすがるようにお祈りを続けている。 哲学的な会話をする世捨て人のホームレス親子。 息子は夜になるとのんべい横丁に出かけて行って残飯をもらってくる。 日雇い職人の男たち、とその妻。 男たちは仕事が終わると必ず一杯ひっかけて、べろんべろんになって帰ってくる。 背広と帽子をかぶった恐妻家の紳士が面白い。 伴淳三郎が演じているのだが、彼には強度の顔面神経痛みたいなものがあり、 とつぜん顔がマヒし「ぶひっ」と言う声を出してその症状が治まるまで 数秒かかるのだ。 会話などがその間、とぎれ、周囲のものは彼をじーっと見つめる。 それが可笑しくて仕方がない。会場内も笑いがそこここで起きていた。 また、妻が過労で入院して姪っ子を養子にした夫が 姪っ子に家事一切と内職をさせて働かせ、自分は酒ばかりのんでる。 そして妻がいないときに姪っ子を手ごめにしてしまう。 姪っ子はまだ15歳である。姪っ子は妊娠しその後事件を起こす。 こうした、世間に実際にあるような事実を冷徹にしかも愛情を持って 黒澤明監督は記述していく。 ヒーローみたいな主人公は出てこない。 この小さな部落の人々の営みを描く群像劇である。 それぞれのエピソードが人生について深く考えるきっかけを与えてくれ、 しみじみとココロに沁み入り残る映画となった。 黒澤明渾身の1作だと思うが、興行的にはまったくふるわなかったそう。 閉塞感あふれるいまの時代に、とてもふさわしい映画だと思う。 ▲
by haruharuyama
| 2010-12-27 08:37
| 映画
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最近の鈴木聡の戯曲のレベルはどうだろう。 今年の1月に上演された「世界の秘密と田中」に次ぐ作品。 どちらも、中年男に対する眼差しが優しい傑作。 それは、鈴木聡自身が51歳という年齢に達したということもあるだろう。 そして、鈴木聡がサラリーマン生活からフリーランスの生活になったことが、 中年男の「冒険」を描ける理由のひとつなんじゃないだろうか?と思う。 ある中小企業の同期が「富士そば」で立ち食い蕎麦を食べている。 俵木藤汰とおかやまはじめの二人。 彼らは今年56歳になる中小企業の部長である。 お互い、あと4年で終わるサラリーマン生活の終止符を どのように迎えるかということを考える年代になっている。 舞台はポップな丸い電飾看板が背景にいくつも描かれており。 そこにはローマ字でシチュエーションを示す様々な文字が書かれている。 「FUJISOBA」「TACHINOMI」「TAXI」「HOSPITAL」 「TOWN」「OFFICE」「DOUTOUR」などというように。 実際、鈴木聡も書いているが自身も「富士そば」と「ドトール」に 立ち寄る率がとても多いと。 僕も「富士そば」大好きである。 コーヒーはマクドナルドで120円のコーヒーを飲むのだが。 バツイチの56歳部長の俵木が同じ会社の派遣の41歳の女性と恋に落ちる。 三鴨絵里子演じる役。 彼女は、同級生の男性(福山伸一)に口説かれているのだが、彼は妻子持ちなのだ。 三鴨は、ひょんなことから俵木とおかやまが飲んでいる 立ち飲み屋に行くこととなったのだが、ものすごく酔っ払っており、 俵木の前で眠ってしまう。 俵木はひどく酔っ払って眠ってしまったおかやまと三鴨の間で途方にくれる。 そこから、物語は一気に展開していく。 地味に、来た球だけを打ち返していればいいサラリーマン生活と 違うもう一つの世界が見えてくる。本当に大切なものは何なのか? ということが問われるようになる。 それは鈴木聡がフリーランスでやってきたことの ある種の意思の表れでもあるのだろう。 鈴木は、新しい世界へと向かう勇気をいつも描いてくれる。 今回は、対比的に。 おかやまはじめは会社に残り、会社内の階段を上っていこうとする。 俵木は三鴨と出会って、サラリーマン生活に終止符を打とうとする。 そんな幸福の絶頂とも思えるときに、あることが起きる。 現実にはたくさんあるだろう悲劇的な事実に鈴木聡は冷徹に目を向ける。 逃げずに描ききることによってそこから本当に大切なことが さらにくっきりと浮かび上がるのだ。 演劇とは、「イノチ」を扱う仕事だと誰かが言っていたことを、思い出した。 人間いくつになっても恋がはじまる姿を見るものはいいもんだ! と思わせてくれる。 終演後、会場内は、温かい拍手に包まれた。 ▲
by haruharuyama
| 2010-12-26 07:19
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青山円形劇場のクリスマスはこの「ア・ラ・カルト」。 もう20年以上も続いている定番の舞台。 副題にこうある。「役者と音楽家のいるレストラン」。 そう、まさに高泉淳子と中西俊博がタッグを組んで 毎年やってきたことに頭が下がる思い。 何でも続けていくことは大変なことである。 1989年から20年間続いた「ア・ラ・カルト」は いったん区切りをつけ、今年から「ア・ラ・カルト2」 ということで出演者が少し変更になり続いている。 どこかのフレンチレストランでの一夜の話。 様々な客がやって来る。 観客たちは彼らの会話を通じて、その客の人生に寄り添う。 そして、ギャルソンたちも同じように彼らの人生の華やかなひと時に寄り添う。 レストランとはもともとそういうハレの日のための特別な場所だった。 東京近郊に住んでいて 外食を頻繁にするような生活になると、 外食やレストランでの食事が日常的なことになってしまい、 ハレの日であるという感覚が日々薄れていく。 しかしながら改めてこうした舞台を見ると レストランは特別な場所でコミュニケーションを するための場所なのだな!ということが良く分かる。 海外のロケなどに行くと、撮影の打ち上げなどで レストランに集まる現地のスタッフたちは 現場のジーンズとTシャツとはうって変わってお化粧をし、 ドレスに身を包みハレの日を楽しむためにやってくる。 ハレの日を演じることがそこで行われる。 決してイヤミではなく人生を楽しもうとしている 根源的な気持ちが、そうさせるのだろう。 舞台の観劇も同じようにハレの日の世界であるなと思う。 小劇場ではその高揚感はなかなか理解しづらいかもしれないが、 オペラハウスやバレエなどの公演に行くと 明らかにハレの日の世界であるなと思わせられる。 ハレの日を楽しむためには ケの日を懸命に生きて生産するということも同時に重要なこと。 働いて、乾いてしまった身体と心に素敵な食事で栄養が 身体のすみずみにまでいきわたり、 観劇によって感動が心のすみずみにまでいきわたる。 それが「ア・ラ・カルト」の持っている本質的な魅力なのだろう。 クリスマスで華やかさを増している青山で、 観客はこの舞台を見て気持ちのいい時間を過ごす。 中西俊博のバイオリンの調べが耳と身体に心地よい。 これらのことが一体になった魅力が 20年以上続いている秘訣なのかもしれない。 この日の特別ゲストはヒカシューの巻上公一だった。 彼のヴォイスパフォーマンスが間近で見られたことにも感謝! そして、高泉淳子は本当に魅力的な女優である。 ▲
by haruharuyama
| 2010-12-25 09:43
| 舞台
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談春独演会。2時間半をたった一人で二つの話だった。 談春は独特なヤクザっ気のようなものがある。 男らしいと言えば男らしく、人情を大切にする任侠もの とも言えるだろう。 その内面が良く出ていたのが名作「赤めだか」。 彼の文章を読むとこのやんちゃなヤクザっぽいにいさんとは 全く違うキャラクターが見えてくる。 その内面が、彼の演じる落語に色濃く反映されているのだろう。 談春の文章に、それは良く現れている。 折り込みの文章を引用する。 今年こそ頑張ろう、よい年にしよう 明るく大晦日を迎えよう 去年は不運だったけどもう忘れよう そうそう悪いことばかり続くわけがない 信じよう 救い、救われよう 大晦日に寝る奴は馬鹿だ、といったそうな 大晦日をテーマにした落語「文七元結」と「芝浜」(大阪で上演予定)の 折り込みに書かれていた言葉である。 マクラの後、「棒鱈(ぼうだら)」、こうした田舎言葉を使った ひょうきんな落語をやるのも談春だなと思う。 仲入り後「文七元結」。 吾妻橋のシーンからはじまるものだと思っていたら、 その前段に長い長い物語があることを知らなかった。 ばくち好きの左官職人の親父がばくちですっからかんになって 帰ってくるところから物語は始まった。 談春がバクチ好きというのを聞いているのでさらに新密度が増し、 談春のバクチに対する認識とともにリアルにそれが伝わってくる。 談春と主人公の左官職人は、実は、同一人物ではないか? という錯覚さへ起こさせる。 吉原に実の娘が親父のことを見るに見かねて借金を返すために訪れる。 そのカタにおかみさんは、五十両を親父に渡す。 2年という猶予期間の間に五十両の金を返さなければ 娘は店に出ることになる。 吉原の置き屋の女将さんは、利子も何もとらずに、そのことを受け入れる。 下働きで働かせ一人前の女にすると約束させて。 こうした人情があのころの日本にはあったのだろう。 吾妻橋の真ん中で、お店の五十両をなくして 身を投げようとしていた文七と五十両を預かってきたばかりの左官職人が出会う。 このシーンが「文七元結」の始まりだと思っていた。 職人が文七のなくした五十両を、代わりに差しだす。 この動機が、なかなか理解できない。 そこを談春は親子の関係に持っていった。 根源的な関係までさかのぼることによって自らを責める職人は 自己否定するかのように五十両を叩きつけてその場を去って行く。 こうしたかたちで語られることによって奇妙な話もある種の説得力を持つ。 談春がものすごい集中力でこの話を一気に語りきった。 円朝の原作自体が面白いが、噺家の解釈で どれくらい人間を理解するのかということが良く見えてくる作品でもある。 同じ話を噺家違いで数席やるという 催しを見てみたいものである。 もうすぐ大晦日。 ▲
by haruharuyama
| 2010-12-24 09:06
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久しぶりの清水宏。 最近はツイッターをフォローしているので 清水宏の公演のお知らせがツイッター経由でわかる。 18日に中野でやるんだ!とメモをしておいて、 後でネットで調べて予約する。 チラシの撮影やデザイン、印刷の費用などが一切かからない。 何回か公演のツイートがあり、行きたいなと思って見ていたところ、 今回はうまくはまった。 なかの芸能小劇場は中野駅北口を中野ブロードウェイ方向に向かい、 ちょうどブロードウェイのビルの隣にその劇場がある。 中野区の医療や福祉関係の施設が入っているビルは エレベーターがストレッチャーを入れられるように奥に長く作られている。 1階の入口のところに清水宏のトレジャーハンター完売です。 とあった。 しかしながら十数分後に、当日券1枚ありますと書き足されてあった。 少し早めに到着したのでチケットを引き換えて 中野の商店街をぶらぶらする。 昔からある店と新規に出来た店が軒を競っている。 アーケード街は家賃が高いのだろうか? 飲食店は軒並み大手の店ばかりである。 そこから一本東側に入った通りでは地元ならではのお店がたくさんある。 あのラーメンの名店「青葉」もその筋に面している。 なかの芸能小劇場は100人入れば一杯になるだろう劇場。 清水宏はテレビに余り出ないのに、公演は一杯。 一度、彼の芸を見るともう一度見たくなる。そんな魅力がある。 いつものおばさんの恰好で清水宏が登場する。 客席いじりをするので、見ている方も、 いつあてられるんじゃないかと緊張する。 そして、毎回楽しみにしている突撃体験のコーナー。 前回、フィギュアスケートの認定試験を受けるという話が むちゃむちゃ面白かった。 今回は、運転免許の1発試験。 府中の免許センターへ通う、清水宏。 教習所の夜間はコースが解放されるそうである。 そこで自己練習し、1発試験に向かう。 いつもこの突撃シリーズは、様々な人と清水宏がかかわっていくところ。 相手はどう思っているのか知らないが 清水宏は果敢に相手に飛び込んでいく、 そしてしばらくすると彼らとの交流が生まれ 友情のようなものが芽生えてくるのである。 今回のそれは府中の試験官だった。 最初は、むちゃむちゃな関係だったとしても 何度も接していくと人間はそれを許容し愛するようになるんだな、 とこの突撃話を聞いているといつも思うのだ。 それはおかしいのだけど、とても心を揺さぶられる。 そんな関係を作り続けている清水宏は ハイテンションで一人二時間を演じきった。 見ている方も心地よい疲れを感じる。 奇妙でばかばかしい関係が愛すべきものになっていく 過程をこれからも見せてくれ! ▲
by haruharuyama
| 2010-12-21 09:41
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